結節性硬化症とは?
結節性硬化症(英語ではtuberous sclerosis complex)は、脳、腎臓、肺、皮膚、心臓など全身のさまざまな場所に腫瘍をつくったり、症状を引き起こしたりする病気です。症状としては、てんかん発作や、言葉や読み書きなどの発達に遅れが出る(精神遅滞)、人とうまくコミュニケーションが取れなくなる(自閉症)、頭痛、吐き気、お腹の痛み、尿に血が混じる、血圧が高くなる、息苦しい、脈が乱れる、歯の表面にくぼみができる、などがあらわれます。
これらの症状がおきるかどうかや、症状の程度は年齢によっても異なりますし、個人差も大きいのが特徴です。
結節性硬化症と診断されたからといって、必ず病状があらわれるとは限りません。何も問題なく一生を過ごせる場合もあります。
結節性硬化症であらわれる腫瘍をはじめとした症状
結節性硬化症の原因は?
結節性硬化症は、体内のmTOR(エムトール)というタンパク質のはたらきをコントロールしている遺伝子(TSC1遺伝子またはTSC2遺伝子のどちらか)が一部変化し、うまくはたらかなくなることが原因と考えられています。これらの遺伝子が変化すると、細胞を増殖させる役割のあるmTOR(エムトール)が過剰にはたらきすぎてしまい、いろいろな場所に腫瘍をつくることでさまざまな症状が起こります。
遺伝する病気ですが、ご両親からの遺伝よりも、偶然、精子か卵子の遺伝子に変化がおこってしまい発病することの多い病気です。
遺伝子の病気というと、まれなもの、特別なものという印象が強いですが、実際には、死ぬまでに少なくとも60%の人は何らかの遺伝子の病気にかかるといわれているほど皆がかかる可能性のある病気です。
どのような症状があらわれますか?
結節性硬化症は、年齢によってあらわれやすい特徴的な症状がいくつかあります。必要なときにすぐに治療が受けられるように、病院での定期的な受診を続けることが大切です。
結節性硬化症の年齢別にあらわれやすい症状
ただし、症状に個人差があり、年齢によっても症状の出方や症状の軽さ、重さがさまざまなため、すべての結節性硬化症の患者さんがこれらの症状すべてを経験するわけではありません。
どうやって診断されるのですか?
いくつかの特徴的な症状を組み合わせて結節性硬化症と診断されます。
また、他の病気と見分けるために、体の中をみることができるCTやMRI、超音波(エコー)などの画像検査や肺のはたらきを調べる検査、眼の検査などをおこない、総合的に診断しています。症状やこれらの検査結果から結節性硬化症と診断できない場合には、遺伝子検査をおこなうこともあります。
結節性硬化症は治りますか?
いまのところ、完全に治すことは難しい病気です。症状をおさえる治療をおこないながら、この病気と一生つきあっていくことが必要になります。
病院に定期的に通院しながら、病気の状態を把握し、異常があったときにすぐに治療できるように備えることが大切です。
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結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン改訂委員会; 金田眞理, 他.:日皮会誌 2018; 128 (1): 1-16
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