緩和ケアは「自分らしく」過ごすための治療
かつての緩和ケアは、おだやかな終末期を過ごすことを目的としてきました。最近では位置づけが変化し、治療の1つとして、薬物療法などほかの治療と合わせてスタートします。しかし、まだ「緩和ケア」という言葉に抵抗感があり、患者さんも周囲で支える人も、「まだ必要ない」と考えてしまう場合が多いようです。
緩和ケアとは、「身体と心の痛みを和らげること」を意味します。痛みは身体だけではなく、診断後に落ち込んだりする精神的なもの、社会的な問題によるストレスなど、さまざまな苦痛が含まれます。苦痛は治療につきもの、仕方のないことと、あきらめる必要はないのです。これは“患者さんのQOL(生活の質)が最優先される”という考え方によるものです。
まず、あなた自身が緩和ケアを理解し、その上で患者さんにその目的や意味を伝え、受診を後押ししてあげてください。
はやめに考えておくことが大切なACP
※「転移性乳がん患者 実態調査」より
まだ必要ないと思いがちなことに、ACP(Advance Care Planning:アドバンス・ケア・プランニング)があります。なじみのない言葉かもしれませんが、ACPは治療を通して、その先の“最期までの生き方”を常日頃から家族と話し合っておこうという考え方で、医療現場で取り組みがはじまっているものです。死まで意識することになるので、「縁起でもない」と思うのも無理はありません。
しかし、今回の調査で、患者さんはACPを希望する傾向が高いことが分かりました(右図)。また、ACPは口頭で伝えたいという患者さんも多く、ゆっくりと話を聞く時間が大切なことがわかります。支える家族やパートナーにとってはつらい作業となるかもしれません。場合によっては、積極的な治療を受けないという選択がされることもあります。それでも、患者さんの意思や価値観を尊重してあげることが大切です。