[日本人女性の16人に1人が乳がん――]
「なぜ、私が、わが妻が、母が、娘が、姉が、妹が、この中に入ってしまったんだろう」
それが、乳がんの告知を受けた患者さんとそのご家族の多くが最初に持たれる疑問であり、その後、乳がん治療とともに続く新たな世界への入り口でもあります。
この疑問を持たれると、まるで一瞬にして世界中が敵に回ってしまったかのような、暗澹たる気持ちになります。自分たち家族だけが世界から取り残されてしまったような、茫々たる孤独感打ちひしがれるかもしれません。
けれども、その扉の向こうには、悩みや迷い、苦しみの世界ばかりが広がっているわけではありません。乳がん治療という修行の場を与えられたことで、心がより強くなり、輝きを増す女性や、家族の絆の深さを再認識して幸福感を得るご夫婦や親子も、現実に大勢おられます。
この世界のどんな種類のできごとも、幸いにして、貴女やあなたのご家族が世界初の体験者ではありません。心強いことに、どんな世界にも“先輩”が存在するのです。
そのことに気づいたとき、貴女やあなたのご家族は、茫々たる孤独感から解き放たれることでしょう。さらに、先輩方が人生の新たなステージを力強く生き抜くさまを学んだとき、暗澹たる気持ちは病気に対する感謝の念にさえ、変わるかもしれません。
このページが貴女とあなたの愛するご家族のための文字通り「羅針盤」となりますように。それが、このホームページの誕生に携わった、私自身の願いでもあります。
聖路加国際病院 乳腺外科部長 ブレストセンター長
山内 英子