最良の医療を受けるための コミュニケーション法
患者さんとその家族の皆様へ 贈る9つのアドバイス
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乳がんの情報サイト
患者さんとその家族の皆様へ 贈る9つのアドバイス
監修:
テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンター
上野 直人 先生
とにかく一歩引いて考えましょう。先入観も、今までの知識も、全部捨ててください。まっさらな気持ちで、「がんではないかもしれない」と疑ってみることから始めましょう。
必ず顕微鏡で細胞を検査(細胞診)して確定診断をしてもらいましょう。
がんが小さくまとまっていて転移の恐れもないⅠ期なら、手術で取り除けば完全に治る可能性があります。しかし多くの病期ではいろいろな治療を組み合わせることになります。
そして、セカンドオピニオン(別の専門家の考え方)を聞いてみることをおすすめします。
生活の中心ががんの治療になってしまいがちですが、できるだけ普通の生活を送りながら気長に治療が続けられるように、医療者と一緒に工夫していきましょう。
一言も漏らさず聞くぞという気合いが医師にも伝わります。また、レコーダー※の併用もおすすめします。繰り返し聞けるため、聞き逃しを防げます。録音する際には「先生の説明をちゃんと理解したいので、録音させてください」と許可をもらいましょう。メモと音声記録を活用して、理解できないことや疑問点を整理し、次の診察で質問してみるといいでしょう。
※携帯電話などの録音機能を使用する際は、オフラインモードにするなど、周りの方にご配慮ください。
家族や友人は精神的な支えとなり、正確に話を聞き取り、客観的な判断をしてくれます。
診察後に質問・疑問が浮かんだときにはメモをしておき、疑問に思ったことは必ず医師に確認しましょう。適切な質問をし、相手のさらなる説明を引き出せるように、コミュニケーション上手になりましょう。
そして、それらの薬について、2つの名前(製品名・一般名)、用法、用量、目的などを書けるようになりましょう。
できれば、2種類、これまでの病歴すべてを詳しく書いてあるものと簡易版の2つを用意しておきましょう。それをもとに、医師とのコミュニケーションをスタートさせましょう。
聞きたいことを十分に聞くためには、医師が余裕を持って話ができる他の時間の約束をもらいましょう。あるいは診察時に、いま質問の時間がとれそうか、医師の都合をたずねてみるのもよいでしょう。
また、事前に質問リストを渡しておくと、医師も準備ができます。
質問時間が取りやすかったり、質問によっては医師に代わって答えられる場合もあり、またその病院を知るうえでも役立つでしょう。
自分にとって何が大事か、優先すべきことは何か、手術後の人生をどう考えているか、きっちり自己分析しておきましょう。そして、必要なことが質問できるように、日頃から練習しておきましょう。
他の人にわかるように説明できれば、あなた自身が理解しているといえます。それにより、さらに医療従事者とのコミュニケーションを進めていくことが可能になります。
それには、自分にとって参考にすべき資料は何か、医療従事者に確かめることが大事です。テレビ、雑誌、書籍などの情報は鵜呑みにせず、主治医に相談しましょう。
説明の練習で整理できた情報や、復習であいまいなところ、予習で疑問に思ったことなどは書き残して、医療従事者に説明・確認しましょう。
そんなときこそ、自分に時間をあげましょう。自分の心の状態を落ち着かせ、病気を理解してから、前向きな治療に取り組みましょう。
医師に「私が受ける治療は標準療法ですか?」とたずねてください。標準療法は、多くの専門家の合意が得られ、ガイドラインに基づいた、最大多数の人が確実に延命する療法です。また、標準療法は膨大なデータにより経過と結果、利点と危険性(ベネフィットとリスク)が明快にわかっている治療です。
標準療法とは、地図でいえば誰もが通りやすいメインストリート。危険な箇所もすべてわかっていて、きちんと道路標識が整備された目的地までの1番の近道ということができるでしょう。
もし、標準療法でない治療をすすめられたら、その理由をたずねましょう。心臓病の持病があるので、心臓への副作用が少ない薬を使うといった明確な理由がわかれば安心です。
氾濫する最新治療の情報に惑わされてはいけません。最新治療を検討する際には、それが標準療法になっているのか、臨床試験がすでに行われているのか、新しすぎてまだ何もわかっていないのかなど、詳しく知らなくてはなりません。また、臨床試験においても同様の考慮が必要です。
「エビデンス」とは・・・
日本語では「科学的根拠」などと訳されています。エビデンスがあるかどうかということに加え、どのレベルのエビデンスなのかが重要です。
どんな状況においても選択肢(オプション)があります。そして選択は、あなたのライフスタイルや希望によって個別化されるべきものです。治療の前はもちろん、治療の途中でも常に自分の希望を医師に伝えましょう。
例えば、乳がんでしたら「乳房を失いたくない」ということが何にもまして強い希望である場合もあるでしょう。また、副作用の強い治療を受けたくない、積極的な治療を受けたい、なるべく入院期間を短くしたいなど、人それぞれ最優先にすることは違うはずです。それぞれの希望を優先する治療と、標準療法を比べながら、医師と一緒に検討することが大切です。
最悪の事態になったときでは、冷静な判断ができません。自分が希望しているのは何か、家族とも話し合い、どんな治療を受けたいかを医師に伝えておきましょう。
別の病院の医師や、専門が違う医師の意見を聞いてみることで、より広い視野で考えることができるようになります。自分が納得できる方向が見つからないときは、サードオピニオンを受けてみるのもよいでしょう。
その際に、まず確認することは、自分は標準療法を受けたかどうかです。次に、臨床試験と標準療法の関係について医師に確認してください。そして、臨床試験がどういう規模で、どういう目的で、どういうシステムで行われるか、詳しく説明を求めてください。そのうえで、ベネフィット(利点)とリスク(危険性)を考慮して判断するようにしましょう。
チーム医療は、患者さんを中心に3つのチームから成り立っていると考えてください。
この3つのチームが協力し合い、補うことで、患者さんは質の高い生活を維持しつつ、理解し納得のうえ、治療を進めていくことができるのです。
それぞれが専門性を発揮して、病気の治癒を目指し、患者さんを中心に連携して治療を行います。
患者さんと会話し、適切なアドバイスをすることで患者さんの不安や心配を取り除いて、主体的な姿勢を引き出します。
患者さんのニーズを常に考慮し、闘病環境がベストになるように患者さんをサポートします。
ご家族には、医療でない領域の3つの大切なことができます。
患者さんの悩みは、多くの場合、回答がなく解決できない問題です。患者さんの抱えている問題点をご家族が認識するだけでも十分なサポートの一環といえるでしょう。ぜひ、それに気づいていただきたいと思います。
大切なのは、患者さんに同意しながら患者さんの話を傾聴することです。例えば、患者さんがいらだっていたら、「いらだつんだね、それも無理はないよ」と受け止めましょう。そして、「どう思っているの?」と話を引き出す助けを出し、特に何も言わずに、話をよく聞きましょう。きっと、患者さんは、「ああ、私の気持ちをわかってくれるんだなあ」と喜びを感じることでしょう。
家族では対処できないほど問題が大きいと思ったら、チームB(臨床心理士、ソーシャルワーカーなどの支援チーム)などに助けを求めるのも、ご家族の大切な役割です。ご家族で抱え込もうとせずに、チーム医療の一員として、チームBと共に患者さんを支えていきましょう。
ご家族はまず、ご自分を大切にしてください。患者さんのためにご自身を犠牲にしたり、やりたいことをすべて我慢してはいけません。ご自身が元気なことが、患者さんを支えるチームとしての活力を維持するためにも重要です。