疫学
Q. 悪性軟部腫瘍の患者さんはどのくらいいますか?
日本の2015年度全国骨軟部腫瘍登録では、良性・悪性の軟部腫瘍が約7600例登録されており、そのうち、約1500例が悪性でした[1]。また日本における悪性軟部腫瘍の年間死亡者数は緩やかに増加しています。[2][3]
Q. 男性と女性はどちらの患者さんが多いですか?
男性にやや多い傾向がみられます。男性より女性での発生割合がやや高いものとしては、滑膜肉腫(かつまくにくしゅ)、平滑筋肉腫(へいかつきんにくしゅ)、血管肉腫(けっかんにくしゅ)などがあります。
Q. 何歳くらいに発症しやすいですか?
年齢ごとに発生する頻度や種類が異なりますが、全体として年齢とともに悪性軟部腫瘍の登録数は増加し、そのピークは60~70歳代であると報告されています。[1]
Q. 悪性軟部腫瘍の原因は何ですか?遺伝しますか?
発症原因はよくわかっていませんが、一部の悪性軟部腫瘍には遺伝性が認められているものがあります。
症状
Q. どのような症状があらわれますか?痛みはありますか?
初期の症状は、痛みを伴わない「しこり」が大腿部や腕、背中などにみられます。腫瘍が大きくなるまで無症状であることが多いため、腫瘍による骨折や手足のしびれ・麻痺によって発見されることがあります。
診断・治療
Q. 良性の軟部腫瘍なら治療しなくても大丈夫ですか?
良性の場合でも放置することによって機能障害が生じる場合には、治療を行います。治療の基本は手術による切除ですが、良性の場合は直接命に関わることは少ないため、切除により機能が維持できるかどうかで判断されます。腫瘍が小さい場合は様子を見ることもあります。
Q. どの診療科で診てもらえばよいですか? また専門医はどうやって探せばいいですか?
悪性軟部腫瘍は非常にまれで、専門医でなければ良性・悪性の診断が難しい病気です。また、もし悪性と診断されたなら、早く治療を開始することが大切です。日本整形外科学会では、地域の医療機関からの医療相談、および患者さん向けの相談窓口として、各地域で骨・軟部腫瘍の診断や治療に携わっている先生方による「骨・軟部腫瘍診断治療相談コーナー」を設けています。こちらも活用して専門医を探してみてはいかがでしょうか。
Q. どのように診断されますか?
良性と悪性で治療方針が異なるため、まずは良性・悪性を診断し、積極的な治療を開始すべきかを判断します。診断では、問診、視診、触診、画像診断、腫瘍組織を用いた組織診断などを行います。
Q. どのような治療をしますか?
悪性軟部腫瘍の治療には、手術療法、放射線療法、化学療法があります。病気の進行度合いによって、手術療法の前後に化学療法や放射線療法を併用することがあります。病気の進行度合いだけでなく、腫瘍の存在する部位の日常生活への影響や、患者さんの年齢、全身状態などを考えて、もっとも適した治療方法を選びます。
Q. 治療は入院しなければなりませんか?(在宅で治療することは可能ですか?)
外来で治療を受けることも可能ですが、患者さんの意向や病気の進行度合い、全身状態など、総合的に考えて判断します。
Q. 抗がん剤にはどのような副作用がありますか?
副作用のあらわれ方は、使用しているお薬によって異なるだけでなく、同じお薬でも人によって異なります。
Q. 妊娠中(あるいは授乳中)でも悪性軟部腫瘍の治療を受けることはできますか?
妊娠中には通常放射線治療を受けることができません。また、悪性軟部腫瘍のお薬には妊娠中、授乳中に使用できないお薬があるため、妊娠中・授乳中の方は診察時に必ず医師に相談してください。
日常生活
Q. 治療しながら仕事を継続することはできますか?
仕事を続けながら治療を受けている患者さんもいます。また入院しても早期に社会復帰された患者さんもいます。自己判断せず、担当の医師に相談しましょう。
Q. 食生活と発症率に関係はありますか?
悪性軟部腫瘍の発症原因は分かっていないため、食生活との関係も不明ですが、他の病気と同様にバランスの良い食事を心がけるようにしてください。
その他
Q. 緩和ケアではどのようなケアを受けることができますか?
緩和ケアは、病気に伴う苦痛に対して患者さんとその家族が自分らしく過ごせるように行われるケアです。苦痛とは身体的な痛みや、精神的苦痛だけでなく、社会的苦痛など様々なものが含まれ、患者さんやその家族の悩みに合わせた幅広い対応を行います。緩和ケアは専門の病棟をはじめとして、一般病棟や在宅で受けることも可能です。つらいときには我慢しすぎず、担当の医師や看護師に相談してみましょう。
Q. セカンドオピニオンを受けたいのですが、主治医に悪い気がして言い出せません。どうしたら良いですか?
軟部腫瘍は非常にまれな病気で、専門医でなければ良性・悪性の診断が難しい病気です。もし悪性と診断されたなら、ご自分の病気を知り、納得した上で前向きに治療に臨むためにもセカンドオピニオンを得ることは大切なことであり、患者さんの権利です。セカンドオピニオンを求める際には、現在の担当医に紹介状を依頼しましょう。紹介状があれば、それまで行った検査の内容が伝わりますから、スムーズに適切な説明を受けることができます。
Q. がんについて何でも相談できる仲間がほしいのですが、どうすれば良いですか?
患者会や患者サロンという患者さんやそのご家族の情報交換の場があります。不安や悩みを共有することができるので、「自分だけではない」という気持ちになれるかもしれません。様々な環境の方がいるので、体験談を聞いたり、アドバイスを受けたりすることもできるでしょう。
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日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会 編.全国骨・軟部腫瘍登録一覧表 2015
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日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍委員会 編:整形外科・病理 悪性軟部腫瘍取扱い規約,金原出版,14-17(2002)
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総務省統計局:人口動態統計(平成12~29年)