慢性骨髄性白血病(CML)において、白血病細胞が限りなくゼロに近く減少している(MR4.5)状態を達成した先の目標として、分子標的治療薬の中止が話題になっています。薬を中止した後も奏効を維持している状態「無治療寛解(TFR)」や中止したあとの検査について解説したページです。
CMLの治療効果には4つのステップが設定されています。ステップ4は、白血病細胞は限りなくゼロの近くまで減少しているMR4.5の状態です。治療の目標としてステップ4を達成し、維持することに変わりはありませんが、その先の目標の一つとして分子標的治療薬の中止が話題になっています。
基本的には絶対に自己判断でお薬の服用を中止しないでください。
近年、ステップ4あるいはそれに近い分子遺伝学的に深い奏効を達成し、一定期間維持した後に分子標的治療薬を中止する臨床試験が数多く行われています。
その結果、一部の患者さんでお薬中止後も奏効を維持できることが報告されています。この状態を「無治療寛解」、TFR(Treatment-free remission)と呼びます。
ただし現在のところ、どのような患者さんが服薬中止後にTFRを確実に維持できるのか、明確な結論は出ていません。あくまでTFRについては、治療目標の一つと考えてください。
お薬の服用を中止しても検査は必要
お薬の服用を中止するとBCR::ABL1遺伝子が増えてくることがあり、CMLが進行する可能性も否定できません。このためお薬の服用を中止した場合、主治医の指示に従い、これまでより高頻度に定期的な検査をすることが必要です。
また、お薬の服用を中止して分子遺伝学的に深い奏効を維持できなくなった状態を、「分子遺伝学的再発」といいます。この場合でも、お薬の服用を再開することで、ほとんどの患者さんが分子遺伝学的に深い奏効の状態に戻ることも報告されています。
定期的に検査をしていれば、TFRを維持できなくなっても適切な段階でお薬の服用を再開することができるため、中止後の検査は非常に重要です。
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日本血液学会編, 造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版, 金原出版, 2023, p.119