前処置関連毒性/生着不全
前処置関連毒性はどのような合併症ですか?
前処置で用いる化学療法剤や放射線照射の副作用です。
主な前処置関連毒性
- 消化器の副作用:口やのどの痛み・炎症(口内炎など)、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢
- 皮膚の副作用:脱毛、皮膚の黒ずみ
- 発熱
- 浮腫
- 血尿
- 赤血球、白血球、血小板数の減少
- 心臓や肝臓、腎臓などの機能障害
など
生着不全はどのような合併症ですか?
移植した造血幹細胞が身体に住みつかない合併症です。
移植後4週間(臍帯血移植は6週間)経っても造血機能が回復しなかったり、一旦回復しても再び少なくなってしまった場合、生着不全とみなします。
生着不全が起こったら、感染の予防とG-CSFの投与を行い、その後再移植を検討します。
GVHD(移植片対宿主病)
GVHDはどのような合併症ですか?
移植時に混入したドナーの白血球(主にリンパ球)や、移植した造血幹細胞から分化・成熟した白血球(主にリンパ球)が身体を攻撃する合併症です。あらかじめ予防薬でGVHDを生じにくくし、また、生じても重症にならないようにします。
GVHDの種類と症状
急性GVHD:移植3ヵ月以内に発症
移植された造血幹細胞に混じっている白血球(主にリンパ球)が身体を攻撃。
- 皮膚の紅斑(赤くなること)や丘疹(皮膚がぷつぷつと小さくもりあがること)
- 吐き気・腹痛・下痢
- 黄疸
慢性GVHD:移植3ヵ月以降に発症
移植された造血幹細胞から分化・成熟した白血球が身体を攻撃。
- 皮膚がカサカサになる、固くなる
- 目や口が乾く
- 黄疸
- 息苦しい(気管支が細くなる)
対策:免疫抑制剤やステロイド剤の投与
感染症
どうして感染症が生じるのですか?
感染症を起こさないようにするには?
感染症にかからないように無菌室で治療しますが、普段の何気ない点にも注意を払う必要があります。
- うがいや手洗いなどをこまめに行う。
- 予防薬を服用する。
- 充分に加熱されていない食べ物は避ける。
など
それでも感染症にかかる危険性は高く、感染した場合には病原体に応じた治療薬を投与します。
感染症を起こしやすい病原体とその時期
病原体 |
特徴 |
---|---|
細菌 |
移植後早期に多く、さまざまな部位に感染します。 |
真菌(カビ) |
移植後早期、特にGVHDを発症している場合に感染しやすく、副鼻腔炎や肺炎などがあらわれます。 |
単純ヘルペスウイルス |
移植後早期に多く、口唇、口腔、外陰などに水疱ができます。 |
サイトメガロウイルス |
肺や腸、肝臓、網膜に感染症を起こしやすく、血液検査でウイルス量をモニターしながら、早期治療を行うことが重要です。 |
水痘・帯状疱疹ウイルス |
以前かかった水ぼうそうのウイルスが、免疫力の低下により再び活動し始めます。痛みを伴う赤い発疹や水疱があらわれます。 |
アデノウイルス |
出血性膀胱炎を起こしやすく、血尿、下腹部痛、排尿時痛などがあらわれます。 |
晩期障害と再発について
晩期障害(治療から数年以上経過後に起こる合併症)
主な晩期障害
- 白内障
- 内分泌障害
- 性腺機能低下(不妊)
- 骨そしょう症
- 大腿骨頭壊死(歩行困難)
- 二次がんの発生 など
移植から長期にわたって合併症が起こる危険性があります。心配しすぎる必要はありませんが、晩期障害のことは心に留めておきましょう。
不妊はほとんどの方に生じますので、移植前に対応策があるかどうか検討しましょう。
再発
造血幹細胞移植を行ったにもかかわらず、病気にかかった細胞が再び増殖(再発)する危険性があります。再発した時は以下の治療法から選びます。
- 免疫抑制剤の投与中止(免疫抑制剤を投与していた場合)
免疫力を向上させ、病気の細胞を退治 - DLI:ドナーリンパ球輸注
ドナーのリンパ球を投与し、免疫力で病気の細胞を退治します。 - 薬物療法(化学療法や分子標的治療、インターフェロン)
- 再移植
※再発の危険性は病気のタイプや身体の状態によって異なります。
-
小寺良尚 編: やさしい造血幹細胞移植へのアプローチ 改訂版,医薬ジャーナル社,2008より作成