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乳がんの情報サイト

監修:
聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長
山内 英子 先生

Q1. 治療費はどのくらいかかりますか。乳がん患者に対する特別な支援制度はありますか。

Q2. 患者本人も含め、家族の中で治療に対する意見が分かれています。どうすればよいでしょうか。

Q3. 入院生活で困ったときは、誰に相談すればよいですか。

Q4. 乳がんという診断を受けた後、母がよく眠れないようで気分も塞ぎ込んでいます。家族が言ってはいけない言葉はありますか。

Q5. 口内炎などのために、食事が十分に摂れなくなりました。食べさせたいのですが、どうすればよいでしょうか。

Q6. 同居する義母が乳がんになりました。小学生と中学生の子ども(孫)にも、本当のことを伝えたほうがよいでしょうか。

Q7. 本人は「家に帰りたい」ようですが、家族が自宅で看取ることはできるのでしょうか。

Q8. 放射線療法とは、どのような治療法ですか。

Q9. 本人が迷惑をかけたくないと、家族の助けを嫌います。どのようにサポートすればよいでしょうか。

Q10. 母が痛みをこらえています。見ているほうがつらくなりますが、仕方がないことでしょうか。

Q11. 本人が残された時間をどこで、どのように過ごしたいのかを知りたいのですが、私たち家族に気兼ねしているのか、本音を言いません。どうすれば気持ちを確かめられますか。

Q12. ホスピス(緩和ケア病棟)は、どのようなタイミングで利用するのがよいですか。

Q13. がんの症状が進行し、だんだん食べられなくなりました。それを見ているのがつらいです。点滴で栄養を補給したほうがよいですか。

Q14. モルヒネは麻薬中毒になると聞きましたが、使っても怖くないですか。

Q15. 再発を告げられ、落ち込んでいる母に、どのような言葉をかければよいのでしょうか。

Q16. 最後は本人が望んでいる生活を送らせたいのですが、どこに相談すればよいですか。

Q17. 母が亡くなった後、「あのときにこうすればよかった」「もっと、よい介護ができたはずなのに」と後悔することばかりで苦しいです。このような思いをもつのは仕方がないことでしょうか。

Q18. ホスピスと緩和ケア病棟、緩和ケアチームの違いは何ですか。

Q19. ターミナルを迎えた母にとってホスピスに入院したほうが楽に過ごせるでしょうか。

Q20. 積極的治療が受けられなくなり、うつ状態になっているようです。家族はどうすればよいでしょうか。

Q21. 家族が通院に付き添ったほうがよいでしょうか。

Q22. 自宅で看取る場合、ホスピス(緩和ケア病棟)に入院させた場合、それぞれどのくらい費用がかかりますか。

Q23. 副作用がつらく、日常生活も困ることがあります。今の仕事は体力的にもきついため、退職して治療に専念する予定です。収入がなくなってしまいますが、利用できる制度はありますか?

Q1. 治療費はどのくらいかかりますか。乳がん患者に対する特別な支援制度はありますか。

治療費は病期や治療内容によって異なります。経済的な問題はメディカル・ソーシャルワーカーに相談しましょう。

治療費は乳がんの病期(ステージ)や治療内容によって異なります。おおよその目安としては、手術(乳房温存術あるいは乳房切除術)を受けた場合、治療費は約60~70万円かかります。さらに、手術後に放射線療法や薬物療法が追加されると約30~100万円以上かかることもあります。

乳がんの患者さんに限った特別な支援制度はありません。しかし、乳がんの治療には公的医療保険が使えるため、患者さんが実際に支払う自己負担金はかかった医療費の1~3割になります。さらに、その自己負担金も「高額療養費」や「限度額適用認定証」の制度を利用すれば、自己負担限度額の範囲内で済みます。

治療費について心配なことがあれば、メディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。MSWは病院の医療相談室またはがん診療連携拠点病院の相談支援センターで活動しています。相談支援センターでは、その病院にかかっていない患者さんやご家族の相談にも電話や面談で応じています。

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医療費を軽減できる制度を知りたいのなら
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
知っておきたい医療保険制度 高額療養費(ノバルティスファーマ)

相談支援センターやMSWの所在について知りたいのなら
がん情報サービス「相談支援センターの情報」
公益社団法人日本医療社会福祉協会「会員マップ」

Q2. 患者本人も含め、家族の中で治療に対する意見が分かれています。どうすればよいでしょうか。

持っている情報や理解度に差があるのかもしれません。まずは家族で情報共有を。

まず、患者さんや家族の間でそれぞれがどんな意見を持っているのか、どこが異なっているのかを整理してみましょう。そして、その治療法を推す理由もはっきりさせたうえで、再度話し合ってみると、実は同じように考えていたことがわかるかもしれません。

がんの告知や治療が進む中で、患者さんと家族は一緒に落ち込み、ときには冷静さを失ってしまいます。そのときの状況によって、意見や思いは変わるということも覚えておきたいものです。

家族の意見が分かれる原因の一つに、医療者から受け取っている情報量や理解度の差があります。患者さんは診察や病状の説明のときには緊張や不安で大事な情報を聞き逃したり、聞き間違えたりすることもよくあります。録音したり、家族が同席してメモを取ったりして、正確な情報をベースに治療法を話し合います。家族間で情報を共有することも重要です。連絡帳を用意し、医療者から提供された情報を書き留め、家族全員が患者さんの状況を把握できるようにしましょう。

また、舵取りをする船頭が多いと、舟はなかなか前に進みません。家族の中で舵取り役となるキーパーソンを決め、担当医や看護師にもキーパーソンは誰かを伝えましょう。患者さんの思いを聞く人、医療の情報を集める人など、家族間で緩やかに役割分担をしておくのもいいでしょう。

意見が食い違う背景には、お互いに口に出さないものの、医療スタッフへの信頼感の違いや経済的な心配などが隠れている場合もあります。意見の違いの根本にあるものを少し考えてみてもいいかもしれません。

患者さんと家族、あるいは家族の間で意見が対立すると、患者さんは本音を言えなくなることがあります。そういう様子が見られたら、看護師や担当医などに入ってもらい、家族がいない場所で話を聞いてもらいます。

治療を受けるのは患者さん本人であり、がんへの向き合い方は人によって異なります。最終的には患者さんの意思を尊重することが大事です。担当医と一緒に、時間をかけてよく話し合いましょう。

患者さんにとって何よりも大切なのは、家族からの「あなたには私たちがついているよ」というメッセージ、そしていつでも話を聞いてもらえるという安心感です。

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乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:診断・治療方法
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q3. 入院生活で困ったときは、誰に相談すればよいですか。

病棟の看護師に相談しましょう。入院から退院まで同じ看護師が患者さんをサポートする「プライマリーナース制」を取り入れる病院も増えています。

手術後に一人でトイレに行けない、同室の患者さんのいびきが気になって眠れないなど、入院生活では予想もしなかった出来事がいろいろ起こります。入院生活を快適に過ごすことは早い回復につながります。困ったときは我慢せずに病棟の看護師に相談してみましょう。患者さんの訴えに耳を傾け、相談に応じるのも看護師の大切な役割の一つです。最近では「プライマリーナース制」といって、入院から退院まで一人の患者さんを同じ看護師が受け持つ仕組みの病院も増えてきました。

また、病室を変わりたいときやほかの入院患者さんとの間でトラブルが起こったときは、病棟の責任者である看護師長に相談したほうが早く解決することもあります。入院費をはじめ経済的な問題で困ったときは、看護師長から医療ソーシャルワーカーを紹介してもらうとよいでしょう。

Q4. 乳がんという診断を受けた後、母がよく眠れないようで気分も塞ぎ込んでいます。家族が言ってはいけない言葉はありますか。

乳がんの診断後2週間を過ぎると、患者さんの心は少しずつ落ち着きを取り戻してきます。励ましの言葉を慎み、見守ることが大切です。いつまでも状態が改善しないときは心の専門家のサポートを受けることも考えましょう。

乳がんと診断された患者さんの心を最初に襲うのは強い衝撃だといわれています。診断時の経験を振り返り、患者さんの多くは「頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなった」と語ります。そして時間が少し経つと、患者さんの心は乳がんの治療や今後の生活に対する強い不安を感じたり、「なぜ、私だけが乳がんになってしまったのか」と憂うつな気分に見舞われたりします。また、物事に集中できない、眠れない、食欲がない、息苦しいといった身体的な症状を伴うこともあります。

しかし、このような心や身体の反応は誰にでも見られることです。一般的には2週間ほどで患者さんの心は少しずつ落ち着きを取り戻すといわれ、それまでの間は「頑張れ」といった励ましの言葉は慎み、温かく見守るようにしたいものです。2週間以上経っても気分の落ち込みや眠れないといった症状が改善しないときは、心の専門家(精神腫瘍医、精神科医、心療内科医、臨床心理士など)のサポートを受けることを考えてもよいでしょう。

また、乳がんの発症から数年が経過しても、患者さんの心は前に進んだり後戻りしたりしながら、常に揺れ動いています。気持ちが安定しないことを理解したうえで、普段どおりに接することも大切です。

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患者の心の変化について知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんとつき合う がんと心

家族ができる心のケアについて知りたいのなら
「がん情報サービス」:がんとつき合う 家族向けの心のケアの情報

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

Q5. 口内炎などのために、食事が十分に摂れなくなりました。食べさせたいのですが、どうすればよいでしょうか。

症状がつらくて食べられないときは患者さんの状態に合わせてやわらかいものや刺激の少ないものなど食べやすいものを用意し、食べられるときに食べてもらうようにします。

化学療法(抗がん剤による治療)や放射線療法などの治療の副作用で、口内炎や味覚異常、吐き気や嘔吐などの症状を伴うことがあります。副作用の強い時期を過ぎれば食べられるようになることが多いのですが、症状がつらくて食べられないときは患者さんの状態に合わせてやわらかいものや刺激の少ないものなど食べやすいものを用意し、食べられるときに食べてもらうようにしましょう。

口内炎ができたときは、うす味で水分が多めのやわらかい料理が食べやすいといわれています。また、食材を刻んだりミキサーにかけたりして小さくすると飲み込みやすくなります。冷たいお茶や水をこまめに取り、口の中の潤いを保つことも口内炎の症状を和らげるのに効果的です。口内炎を治療する内服薬やうがい薬、塗り薬などもありますので、担当医や看護師に相談してみましょう。つらい症状を我慢させることはありません。

治療中や療養中の食事の工夫について詳しく知りたいときは、担当医または看護師に申し出て、管理栄養士につないでもらい、アドバイスを受けるのがよいでしょう。

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治療中の食事のヒントについて知りたいのなら
財団法人がん研究振興財団:食事に困った時のヒント(がん治療中の患者さんとご家族のために)
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:患者必携 がんになったら手にとるガイド 食事と栄養のヒント P183

Q6. 同居する義母が乳がんになりました。小学生と中学生の子ども(孫)にも、本当のことを伝えたほうがよいでしょうか。

患者さんの治療や療養が始まると、お子さんの生活にも影響が出てきます。同じ情報を共有していることが望ましいでしょう。

患者さんが病気になる前の家族の関係性や土地柄(がんに対する偏見が強い)などによっても状況は異なるため、未成年の子ども(孫)に真実を伝えることの判断は難しいものです。しかし、患者さんの治療や療養が始まると、そのサポートをする家族も一緒に闘病生活に入ります。また、小さな子どもでも家族の変化を敏感に感じ取ります。お子さんの生活にも影響が出てきますので、同じ情報を共有していることが望ましいといえます。

子どもに伝えるときは、余計な不安感や疎外感を与えないように家族みんながそろっている場所で話すのがよいとされています。その際は、乳がんがどのような病気で、患者さんがどのような状態に置かれていて、これからどのような治療を受けるのかを客観的に説明することが大事です。また、子どもの性格や年齢に応じての配慮も必要です。たとえば①悲しいことにダメージを強く受ける性格であれば家族の誰かが心のケアをする、②難しい言葉を使わない、③すべての情報を一度に説明するのではなく何度かに分けて話す、④明るい見通しやプラスの情報も入れるといった工夫をします。

そして、患者さんが治療を始めることで家族の生活にどのような影響が出てくるのかを話したうえで、お子さんにできる範囲で具体的な協力を求めてみましょう。子どもは自分なりに家族の一員として患者さん(おばあちゃん)のために、そのサポートをする家族(お父さんやお母さん)のために何かしたいと思っているはずです。

患者さんが治療を受けている病院に精神腫瘍医や臨床心理士がいる場合は、子どもにダメージが少ない伝え方について相談するのも一つの方法です。

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がんになった家族を持つ子どもへのサポート情報を知りたいのなら
厚生労働省支援事業~Hope Tree(ホープツリー)パパやママががんになったら~

家族ががんになったときのサポート情報を知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:家族ががんになったとき

家族のがんについて、子どもにやさしく教えるためのパンフレットがあります
ノバルティスファーマ株式会社~がん領域への取り組み~資料ご紹介・ダウンロードコーナー

こころやコミュニケーションのサポートについて(ノバルティスファーマ)
こころやコミュニケーションのサポート

Q7. 本人は「家に帰りたい」ようですが、家族が自宅で看取ることはできるのでしょうか。

在宅ケアチーム(在宅医、訪問看護師、保険薬局薬剤師、ヘルパーなど)によるサポート体制をつくり、家族も医療者からしっかり心のケアを受けることができれば、自宅で看取ることは十分可能です。

自宅で看取る際に家族がいちばん心配になるのが介護の負担だといわれています。しかし、がん患者さんの看取りをサポートしている在宅診療所が行った調査によると、亡くなる前日または当日まで半数の患者さんが、亡くなる1週間前では大半の患者さんが、自分でトイレに行くことができたそうです。つまり、一般的にがん患者さんは寝たきりになることは少なく、家族の身体的介護の負担はそれほど大きくないといえます。

それよりも大変なのは精神的な負担だといわれています。患者さんが少しずつ衰弱し、死がだんだん近づいてくることをずっと見ていなければならない家族は、非常につらい精神状態に置かれます。自宅で看取るためには、患者さんだけでなく、家族もサポートをしてもらう必要があります。言い換えれば、在宅ケアチームによるサポート体制をつくり、しっかりケアを受けることができれば、自宅で看取ることは十分に可能です。

希望を叶えると決めたら、患者さんの体力が残っているうちに早めに担当医や病棟看護師に相談しましょう。病状が進みすぎるとタイミングを失い、家に帰れないことがあるからです。そして、病院の退院調整看護師や医療ソーシャルワーカー、地域のケアマネージャーの力を借りて、患者さんと家族を助けてくれる在宅ケアチーム(在宅医、訪問看護師、保険薬局薬剤師、ヘルパーなど)をつくり、自宅での療養や介護に備えましょう。なお、がんのターミナル期は介護保険の特定疾患に該当しますので、40~64歳の人でも介護保険サービスが利用できます。

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在宅ホスピスや緩和ケアを提供する診療所の所在を知りたいのなら
NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケアを提供する診療所・訪問看護ステーション等」
日本在宅ホスピス協会「末期がんの方の在宅ケアデータベース」
日本ホスピス・在宅ケア研究会「在宅医リスト」

介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
東京都福祉保健局「介護保険パンフレット」

Q8. 放射線療法とは、どのような治療法ですか。

放射線でがん細胞を壊す治療法です。乳がんでは乳房温存療法の手術後の照射が一般的です。

放射線療法は、手術や薬物療法とともに、がんの3大療法の一つで、放射線をがんに照射して、細胞のDNAに働きかけ、がん細胞を壊したり、がん組織を小さくしたりする治療法です。細胞分裂が速い細胞によく効くため、正常細胞よりもがん細胞のほうがダメージを受けます。通常、使われるのはX線やγ線、電子線で、炭素線と陽子線を使う粒子線治療も行われています。体の外から照射する方法と、小さな線源を体の中に入れて照射する方法があり、体の表面に近い部分にできる乳がんでは体外からの照射で治療するのが一般的です。

放射線療法は単独で行われる場合と、手術や化学療法と組み合わせて行われる場合があります。乳がんでは放射線療法が単独で行われることはほとんどなく、乳房温存療法では、乳房部分切除の後、患部の側の残った乳房全体に外部照射します。ほとんどの場合は外来で治療できます。

臓器を切除する手術とは異なり、臓器の形や機能を残せるというメリットがある一方で、放射線を照射した部分を中心とした皮膚障害(日焼けをしたようなピリピリ感など)、だるさ、食欲不振、吐き気、口内炎などの副作用が出ます。また、治療後、半年から数年経ってから神経や皮膚などに「晩期障害」が出るケースもあります。照射してすぐは、皮膚が敏感になっているので、洗うときはそっと洗い、皮膚への刺激が少ない綿素材の下着などを着用しましょう。

治療中は患者さんの体調に気を配り、無理をさせないようにしましょう。なお、外部照射をしても家族など周りの人への影響はないので、放射線被ばくを心配する必要はありません。

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乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん

放射線療法について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:放射線療法総論

放射線について知りたいなら
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 放射線Q&A

Q9. 本人が迷惑をかけたくないと、家族の助けを嫌います。どのようにサポートすればよいでしょうか。

患者さんの負担感を和らげるために、家族が手助けしたいと思っていることを伝えたうえで、患者さんが家族に頼みたいと思っていることを具体的に挙げてもらい、お互いに無理がないように調整しましょう。

家族のサポートをどのくらい受けたいかは、病状やその日の体調、患者さんの性格や家族との関係によってさまざまでしょう。また、自分のために家族が人生のすべてを犠牲にしているのではないかと悩まれる患者さんは少なくありません。病気になる前と変わらず、自分でできることは自分でしたいと考える患者さんもいますし、自分の生活や病状を家族に細かく知られるのがわずらわしいと考える患者さんもいます。あるいは、これから先にもっと助けてもらう時期が来るから、今は自分でできることをするべきだと思っているのかもしれません。

このような患者さんの家族に対する負担感を和らげるには、まずは「患者さんのために、どのようなことをしたい」と考えているのかをきちんと伝えてみましょう。そして、患者さん自身の希望もじっくりと聞きます。患者さんが家族に頼みたいと思っていることをできるだけ具体的に細かく挙げてもらい、箇条書きにして整理するといいでしょう。そのうえで労力や時間、かかるお金などの面も考慮し、お互いに無理がないように調整します。患者さんや家族の生活や体調が変わったときには、新たに話し合ってみましょう。

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がん患者さんの心の状態やケアについて知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんと心
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:家族向けの心のケアの情報

Q10. 母が痛みをこらえています。見ているほうがつらくなりますが、仕方がないことでしょうか。

痛みを上手にコントロールする方法が確立されているので、痛みに対しても適切な治療を受けることが大切です。

痛みに耐えることによって、がんに勝っているような気持ちになるのは多くの患者さんによくみられる心理です。しかし、それは必要のない我慢です。WHO(世界保健機関)では、がんの痛みは治療すべき症状であると提言し、「がん疼痛治療指針」を発表しています。この治療指針をもとに現在、多くの医療機関では痛みを上手にコントロールする方法が確立されていますので、痛みに対しても適切な治療を受けることが大切です。家族は、そのことを患者さんに伝えるとともに、担当医にも患者さんの痛みの状態(①いつから、②どこが、③どのように、④どの程度の強さで、⑤痛みが強くなるとき、痛みが楽になるときなど)と、痛みに対する患者さんの気持ちを伝え、きちんと痛みを取り除いてもらいます。

また、痛みが上手にコントロールできないときは緩和ケアチームのサポートを受けるのもよいでしょう。緩和ケアチームでは、痛みのケアを専門とする緩和ケア専門医や緩和ケア認定看護師が中心となって活動しています。さらに近年は、緩和ケア外来を開設する医療機関も増えてきましたので、積極的に利用しましょう。

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がんの痛みについて知りたいのなら
痛みを我慢しない(がん情報サービス)

緩和ケアについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんとつき合う・緩和ケア

緩和ケアチームの所在について知りたいのなら
日本緩和医療学会「緩和ケアチーム登録」:登録施設一覧ページ
日本ホスピス緩和ケア協会「受けられる場所を探す」:緩和ケアチーム

緩和ケア専門医の所在について知りたいのなら
日本緩和医療学会「専門医認定制度」:専門医名簿

緩和ケア認定看護師の所在について知りたいのなら
日本看護協会「緩和ケアの認定看護師登録者一覧」

Q11. 本人が残された時間をどこで、どのように過ごしたいのかを知りたいのですが、私たち家族に気兼ねしているのか、本音を言いません。どうすれば気持ちを確かめられますか。

患者さん自身は「家族に負担をかけたくない」という遠慮があり、家族に自分の希望を率直に伝えにくいことがあるのかもしれません。患者さんの気持ちを聞き出す方法の一つとして第3者の力を借りてみましょう。

多くの患者さんは「家族に負担をかけたくない」という遠慮があり、自分の希望を率直に伝えにくいようです。また、残された時間をどこで、どのように過ごしたいのかと聞かれても、すぐに答えが出てこないこともあります。

患者さんの気持ちを聞き出す方法の一つとして、第3者の力を借りてみましょう。患者さんも信頼できる他人になら本音を話せるかもしれません。患者さんの兄弟姉妹、親戚、友人や知人など、普段から打ち解けて何でも話をしている人に相談してみます。もし、心当たりがなければ、患者さんが信頼している医療者に働きかけてもらうのもよいでしょう。患者さんや家族の心のサポートにあたる精神科医や心理療法士に相談すると、患者さんの気持ちを聞き出すためのよいアドバイスをもらえることもあります。

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がん患者さんの心の状態やケアについて知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんと心
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:家族向けの心のケアの情報

Q12. ホスピス(緩和ケア病棟)は、どのようなタイミングで利用するのがよいですか。

ホスピス(緩和ケア病棟)に入院できるのは、がんの進行に伴う体のつらい症状や精神的な苦痛があり、積極的治療の適応がない、あるいは希望しない患者さんです。利用にあたっては条件がありますので、施設に問い合わせてみましょう。

日本でホスピスが始まったのは1973年のことです。以来、キリスト教系の民間病院を中心に少しずつ全国に広がり、1990年には公的医療保険が適用される「緩和ケア病棟」が新設されました。そのため、「ホスピスケア」のほぼ同義語として「緩和ケア」という言葉が使われるようになりました。このように名称に違いはありますが、現場で行われている治療やケアの内容に大きな差はありません。ホスピスケアや緩和ケアの基本的な考え方は、積極的な延命治療は行わず、患者さんの人間性を最大限に尊重しながら、身体的ケア、精神的ケア、社会的ケア、スピリチュアルペイン(死を意識することで起こる苦痛や苦悩)ケアを提供していくというものです。

ホスピスや緩和ケア病棟に入院できるのは、がんの進行に伴う体のつらい症状や精神的な苦痛があり、がんを治すことを目的とする治療(手術、化学療法、ホルモン療法、放射線療法など)の適応がない、あるいはこれらの積極的治療を希望しない患者さんです。ホスピスや緩和ケア病棟を利用するためには入院条件を満たしている必要があります。

近年、ホスピスや緩和ケア病棟の利用を希望する患者さんが増えていますので、申し込んでもすぐには入院できないことがあります。切れ目のないケアを受けるためにも、ホスピスや緩和ケア病棟の利用を考えた時点で、入院の条件や待機期間などを各施設に問い合わせるのがよいでしょう。

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緩和ケア病棟の所在について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:緩和ケア病棟のある病院の情報
日本ホスピス緩和ケア協会「受けられる場所を探す」:ホスピス緩和ケア病棟

ホスピスケアについて知りたいなら
日本ホスピス緩和ケア協会「ホスピスってなあに?」
日本ホスピス緩和ケア協会「ホスピス緩和ケアQ&A」
日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団「ホスピス・緩和ケアとはなんですか」

Q13. がんの症状が進行し、だんだん食べられなくなりました。それを見ているのがつらいです。点滴で栄養を補給したほうがよいですか。

人生の最後に向かう過程の一つとして食欲が低下していきます。この時期の点滴による栄養補給は、担当医や緩和ケア医に十分に相談し、的確に対処してもらいましょう。

食欲があることは健康の証であり、患者さんがだんだん食べられなくなるのを見るのは家族としてつらいことです。人生の最後に向かう過程で、患者さんの状態によっては食欲が低下していきます。この時期に無理に食べさせたり、あるいは点滴で栄養補給したりすることによって状態が悪化することがあります。また、便秘や嘔吐・吐き気など他の症状が食欲不振の原因になっていることもあるため、担当医や緩和ケア医に十分に相談し、的確に対処してもらうことが大切です。

そのうえでの食事の留意点としては、栄養価よりも本人が食べたいものを優先し、食事の量にはこだわらないようにします。消化がよく口あたりのよい食べ物(麺類、酢のもの、果物など)を用意するほか、食べられないときは香りだけでも楽しんでもらいましょう。食事の工夫については管理栄養士のアドバイスを受けることをおすすめします。

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ターミナル期の食事のポイントについて知りたいなら
日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団「がん緩和ケアに関するマニュアル」:第5章痛み以外の身体的諸症状のマネジメント
日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団「がん緩和ケアに関するマニュアル」:第7章日常生活の援助

Q14. モルヒネは麻薬中毒になると聞きましたが、使っても怖くないですか。

モルヒネは、WHOの「がん疼痛治療指針」の中でも認められている効果の高い鎮痛薬です。痛みのある患者さんに使用するかぎり、精神的な依存を起こすことはありません。

モルヒネは医療用麻薬に分類される薬剤で、痛みを緩和する目的で以前から使用されてきました。アヘンが原料となることから「モルヒネ=麻薬」との印象が強く、患者さんや家族の中にはモルヒネ中毒を心配する人がいます。しかし、痛みのある患者さんに使用するかぎり、精神的な依存を起こすことはありません。

WHO(世界保健機関)は1986年に「がん疼痛治療指針」を発表し、痛みの強さに応じて3段階の尺度(1.弱い痛み、2.中等度の痛み、3.強い痛み)を決め、それに対応する具体的な鎮痛薬と使い方を示して、痛みの治療の標準化を図りました。この3段階ラダーにおいても、モルヒネは強い痛みに対応する効果の高い強オピオイド製剤として認められています。最近は、モルヒネ以外にもオキシコドンやフェンタニルなど新しいオピオイド製剤が開発されてきたので、それぞれの薬剤の特徴をふまえたうえで患者さんの痛みに合わせて使い分けるようになってきました。

モルヒネにかぎらず、これらのオピオイド製剤には吐き気や眠気、便秘などの副作用の頻度が高いことがわかっていますが、副作用が現れる前にそれぞれの症状に対処する薬剤を投与して予防します。モルヒネを使用することに対して不安や疑問があるときは、遠慮せずに担当医や看護師、薬剤師に相談し、痛みを我慢することは避けてください。

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がんの痛みや対処法について知りたいなら
痛みを我慢しない(がん情報サービス)

Q15. 再発を告げられ、落ち込んでいる母に、どのような言葉をかければよいのでしょうか。

患者さんにかける言葉を探すよりも、いつも傍にいることを伝え、患者さんに寄り添いましょう。

再発とは、手術で取りきれていなかった目に見えないがんが再び現れたり、薬物療法(抗がん剤治療)や放射線療法で小さくなったりあるいは大きさが変化しなかったがんが再び増大したりすることをいいます。

一般的に、再発を告げられた患者さんの心に起こる衝撃は、最初のがん告知のときよりも深刻だといわれています。自分のがんに対する情報をある程度持っているだけに心により大きなダメージを受けるからです。また、これまでの治療でめざしてきた「治癒」という目標を変更せざるを得ず、気持ちを立て直すまでにとても時間がかかります。

再発の告知を受けた後の反応は、人によってさまざまです。そのため、周りの人は患者さんの反応をよく観察し、それに合わせた対応を心がけることが大切です。深く落ち込み、動揺が強い場合は、周りの人が話しかける言葉も耳に入ってこないことが多いものです。そんなときは患者さんにかける言葉を探すよりも、いつも傍にいることを伝え、患者さんに寄り添いましょう。そして、患者さんが自分から話せるような気持ちになったら、時間をかけて今後のことを話し合いましょう。

患者さんへの対応に困ったときは、精神腫瘍医や臨床心理士のアドバイスを受けるのも一つの方法です。担当医や看護師に相談してみてください。

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がん患者さんの心の状態やケアについて知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんと心
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:家族向けの心のケアの情報

再発についてのサポート情報を知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:もしも、がんが再発したら[患者必携]本人と家族に伝えたいこと(PDF版)

こころやコミュニケーションのサポートについて(ノバルティスファーマ)
こころやコミュニケーションのサポート

Q16. 最後は本人が望んでいる生活を送らせたいのですが、どこに相談すればよいですか。

現在かかっている病院の「医療相談室」あるいはがん診療連携拠点病院に設置されている「相談支援センター」のメディカルソーシャルワーカーに相談してみましょう。

患者さんが最後の時間を過ごす主な場所としては、病院の一般病棟のほかに自宅や病院の緩和ケア病棟、ホスピスなどがあります。このうち自宅や緩和ケア病棟、ホスピスを選択する場合は、患者さんの希望をかなえる形で医療体制を整えるのには時間がかかります。緩和ケア病棟やホスピスでは、療養を希望する患者さんや家族が多く、施設によっては予約や待機が必要です。また、病状が進みすぎると、自宅に帰れるタイミングを失うこともあります。

そのため、患者さんが最後にどのような生活を望んでいるのかを早めに確認して、現在かかっている病院の「医療相談室」あるいはがん診療連携拠点病院に設置されている「相談支援センター」のメディカルソーシャルワーカーに相談し、医療体制を整えましょう。入院中であれば、患者さんの気持ちを確かめる方法を含め、その手順について病棟看護師や退院調整ナースに相談するのもよいでしょう。

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相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

緩和ケア病棟の所在について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:緩和ケア病棟のある病院の情報
日本ホスピス緩和ケア協会「受けられる場所を探す」:ホスピス緩和ケア病棟

在宅ホスピスや緩和ケアを提供する診療所の所在を知りたいのなら
NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケアを提供する診療所・訪問看護ステーション等」
日本在宅ホスピス協会「末期がんの方の在宅ケアデータベース」
日本ホスピス・在宅ケア研究会「在宅医リスト」

Q17. 母が亡くなった後、「あのときにこうすればよかった」「もっと、よい介護ができたはずなのに」と後悔することばかりで苦しいです。このような思いをもつのは仕方がないことでしょうか。

患者さんが亡くなった後に後悔する気持ちが残るのは、どんなに一生懸命に行なっても、どの家族にもみられることです。遺族へのグリーフケア(悲嘆ケア)を行う医療機関もありますので、専門家の助けも借りながら、つらい気持ちを抱え込まないようにしましょう。

患者さんが亡くなった後に後悔する気持ちが残るのは多かれ少なかれ、どの家族にもみられます。立ち直りには通常1年ほど時間がかかりますが、個人差があり、なかには数年かかる人もいます。感情を無理に押し込めたり、自責の念にとらわれすぎたりしないことが大切です。

遺族が体験する身体的あるいは精神的打撃に対しては「後治療」と呼ばれる医学的な援助が必要になることがあります。近年は遺族も「第2の患者」と認識されるようになり、遺族に対するグリーフケア(悲嘆ケア)を行ったり、「遺族外来」を設置して精神腫瘍医が治療にあたったりする医療機関も出てきました。つらいときは一人で抱え込まず、専門家の助けも借りましょう。遺族ケアを行っている医療機関の所在を知りたいときは、お住まいの近くのがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターに問い合わせてみてください。

また、語り合える家族や友人がいれば、つらい気持ちを話してみるのもよいです。全国にはグリーフケアの活動を行っている自助グループがいろいろありますので、そういった団体のミーティングに参加してみるのもよいかもしれません。

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遺族ケアについて知りたいなら
埼玉県ホームページ:大切な人を失うということ(遺族ケア)
埼玉医科大学国際医療センター:精神腫瘍科/遺族外来
九州がんセンター:サイコオンコロジー科

悲嘆ケアについて知りたいなら
悲嘆回復ワークショップ:ケアを受けたい方へ

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

Q18. ホスピスと緩和ケア病棟、緩和ケアチームの違いは何ですか。

いずれもがんに伴うあらゆる苦痛を和らげるための治療やケアを提供します。ホスピスと緩和ケア病棟はターミナル期のがん患者さんを対象に、緩和ケアチームはすべてのがん患者さんを対象に一般病棟や外来でもケアを提供しています。

ホスピスとはターミナル期のがん患者さんを対象に治療やケアを提供する施設で、その基本的な考え方は積極的な延命治療を行わず、患者さんが抱えている身体的、精神的、社会的、霊的(死を意識して起こる)苦痛を和らげ、最後まで患者さんが自分らしく生きられるようにサポートします。

日本におけるホスピスケアは1970年代から始まり、キリスト教系の病院を中心に少しずつ広がり、1990年に国がホスピスケアを提供する施設として「緩和ケア病棟」を新設すると全国に普及しました(2012年8月現在、認可されている緩和ケア病棟は255施設)。このような歴史的背景のもと、ホスピスと緩和ケア病棟ではほぼ同じケアが行われています。

ただし、近年、緩和ケアの考え方としてターミナル期だけでなく、がんと診断された初期の段階からすべてのがん患者さんに提供すべきという方向性に変わってきました。そのため、麻酔科医、精神科医、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど、さまざまな医療スタッフで構成される緩和ケアチームが活動するようになり、一般病棟や外来でも緩和ケアが行われるようになりました。がんに伴う苦痛や症状を和らげるために緩和ケアを受けたいときは担当医または外来・病棟の看護師に相談してください。

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ホスピスや緩和ケア病棟の所在について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:緩和ケア病棟のある病院の情報
日本ホスピス緩和ケア協会「受けられる場所を探す」:ホスピス緩和ケア病棟

Q19. ターミナルを迎えた母にとってホスピスに入院したほうが楽に過ごせるでしょうか。

ホスピスには苦痛を軽減させる専門家が揃っていますので、一般病棟に入院するよりもきめ細かい治療やケアが受けられます。ただし、本人にとって最後を過ごす場所としてベストとはかぎらないので、患者さんの希望をもう一度、よく確認することが大切です。

ホスピス(緩和ケア病棟)には、がんの進行に伴う痛みや呼吸困難、全身倦怠感、吐き気・嘔吐、リンパ浮腫などのつらい苦痛を和らげる技術に精通した緩和ケア医や看護師(がん専門看護師、緩和ケア認定看護師)、心のつらさに対応する精神腫瘍医や臨床心理士などの専門スタッフが患者さんの治療やケアにあたっていますので、一般病棟に入院するよりきめ細かなケアが受けられるでしょう。 その人らしく最後まで過ごすためにあらゆる苦痛を取り除くことはとても重要なことです。しかし、ホスピス(緩和ケア病棟)が患者さん本人にとって「最後を過ごす場所」として必ずしもベストだとはかぎりません。最後の時間を、どこで、どのように過ごしたいのか、患者さんの希望をもう一度、確かめることが大切です。

最近は在宅でホスピスケアを提供する診療所が増えてきたので、自宅で過ごしたいという希望があった場合も、苦痛の少ないその人らしい生活を送ることが可能になってきました。ホスピス(緩和ケア病棟)や在宅ホスピスに関する情報は、がん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターに問い合わせてみましょう。

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ホスピスや緩和ケア病棟の所在について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:緩和ケア病棟のある病院の情報
日本ホスピス緩和ケア協会「受けられる場所を探す」:ホスピス緩和ケア病棟

在宅ホスピスや緩和ケアを提供する診療所の所在を知りたいのなら
NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケアを提供する診療所・訪問看護ステーション等」
日本在宅ホスピス協会「末期がんの方の在宅ケアデータベース」
日本ホスピス・在宅ケア研究会「在宅医リスト」

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

Q20. 積極的治療が受けられなくなり、うつ状態になっているようです。家族はどうすればよいでしょうか。

ご家族だけで対応することは難しいので、心の専門家や緩和ケアチームに相談してみましょう。体の状態が楽になることで、患者さんに“生きる気力”が再びわいてきます。

積極的治療が受けられなくなっても、体調を整える、いわゆる緩和ケアで生命予後の改善を望めることがあります。強い作用がある治療を行わなくなったことで、体が楽になり、その分だけ時間を有効に使える場合もあります。しかし、積極的治療が受けられなくなったとき、患者さんの心には最初の告知や再発時よりも強い衝撃が襲ってくるといわれています。そのため、うつ状態にもなりやすくなっています。このような状況に置かれた患者さんの心を支えるには、その人の存在を安定させるサポートが大切だと考えられています。

この時期、ご家族だけで患者さんの不安定な心に対応するのは難しいので、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。まず担当医に相談し、心の専門家(精神腫瘍医または精神科医、心理療法士)や緩和ケアチームを紹介してもらいましょう。

また、前述したように積極的治療が受けられなくなっても治療が何もできなくなるわけではありません。心や体の状態が楽になることで、患者さんに“生きる気力”が再びわいてくる可能性もあります。

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がん患者さんの心の状態やケアについて知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんと心
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:家族向けの心のケアの情報

緩和ケアについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんとつき合う・緩和ケア

積極的治療が受けられなくなったときのサポート情報を知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:もしも、がんが再発したら[患者必携]本人と家族に伝えたいこと(PDF版)

Q21. 家族が通院に付き添ったほうがよいでしょうか。

患者さんの心身の調子を見て、付き添うかどうかの判断を。患者さんの体調が思わしくなかったり不安が強かったりする場合は、無理のない範囲で調整し、付き添うほうが患者さんも安心でしょう。

退院後にホルモン療法や化学療法などの治療を継続していても、副作用がうまくコントロールされていれば、ふだんどおりの生活を送れることがほとんどです。通院も患者さんが自分ひとりでできるのであれば、必ずしも付き添わなくてもかまいません。

しかし、副作用の症状は患者さん本人にしかわからないので、患者さんがつらそうなときは我慢をさせず、担当医や看護師に遠慮なく伝えられるよう、手助けするために一緒に外来受診することも一つのサポートです。

ときには付き添い、担当医との診察の様子を見ることで、家族は想像していなかった患者さんの不安や悩みなどを知ることができるかもしれません。担当医の話を一緒に定期的に聞くことで、家族もこれからの見通しが理解しやすくなり、今後の治療を決めるのにも役立つかもしれません。

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乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q22. 自宅で看取る場合、ホスピス(緩和ケア病棟)に入院させた場合、それぞれどのくらい費用がかかりますか。

いずれの場合も健康保険が使えるため、患者さんが支払う自己負担額は、かかった医療費の1~3割になります。具体的な費用については医療ソーシャルワーカーに尋ねてみましょう。

自宅で看取る場合も、ホスピスに入院した場合も、いずれも健康保険が使えるため、患者さんが支払う自己負担額は、かかった医療費の1~3割になります。さらに「高額療養費」や「限度額適用認定証」の制度を利用すれば、自己負担限度額の範囲内で済みます。自己負担限度額は、年齢(70歳未満、70歳以上)と所得区分によって決められています。たとえば70歳未満で所得区分が標準報酬月額28~50万円の場合は8~9万円程度の自己負担限度額となります。

ホスピス(緩和ケア病棟)では、医療費のほかに食費、個室料(差額ベッド代)、おむつ代などが別途かかり、これらの費用には健康保険が適用されないため、全額自己負担になります。また、それぞれの施設ごとに費用は異なります。

自宅で看取る場合は、40歳以上であれば公的介護保険サービスも使えます。介護保険サービスの利用料は要介護度によって異なり、それぞれ支給限度額が設定されています。患者さんが支払う自己負担額は利用料の1割になります。

具体的な費用については、ケアを提供してくれる医療機関またはがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターの医療ソーシャルワーカーにお尋ねください。介護保険の申請には時間がかかりますので、早めに相談しておくことをおすすめします。

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高額療養費制度について詳しく知りたいのなら
「お金と生活の支援」(がん情報サービス)

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Q23. 副作用がつらく、日常生活も困ることがあります。今の仕事は体力的にもきついため、退職して治療に専念する予定です。収入がなくなってしまいますが、利用できる制度はありますか?

退職後に利用できる制度としては、「資格喪失後の傷病手当金」・「障害年金」・「失業等給付」(いわゆる「失業保険」)などが考えられます。

○「資格喪失後の傷病手当金」
傷病手当金は、次の条件を満たしているとき、退職後も引き続き受給することができます。

1)継続して1年以上加入していること
2)在職中に3日間の待期期間が終了していること
3)在職中に傷病手当金を受けている・受ける権利があること
4)退職日において労務に服していないこと

受給期間は、最初に給付を受け始めた日から最長1年6か月です。請求先は、加入していた健康保険となります。

○「障害年金」
病気が理由で日常生活に支障が出ている場合、障害年金の受給ができる可能性があります。
障害年金は、障害認定日(原則的には病気の初診日から1年6か月経過している時点)で、年金の障害等級に該当していれば、その病気の初診日時点に加入している年金制度(国民年金または厚生年金)から支給されるものです。がんの場合、治療による副作用等により、日常生活に支障を来している場合などにも対象になる場合があります。
問い合わせ・請求先は、お近くの年金事務所となります。

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障害年金(日本年金機構)

○「基本手当」(いわゆる「失業保険」)
雇用保険に加入していた方が離職し、求職活動をしている間、基本手当を受けることができます。ただし、基本手当は、仕事が可能で、かつ、求職活動をしている場合に支給されるものです。したがって、体力がなく、治療に専念する場合は対象外となります。

しかし、この基本手当は、体力が戻り、仕事が可能となった場合に受けることが可能ですので、受給期間の延長手続きをしておくことをお勧めします。最大4年延ばすことができます。受給期間の延長手続きは、離職後すぐに行うようにします。

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基本手当(ハローワークインターネットサービス)

以上、退職後を乗り切りために利用できる主な公的制度を見てきました。

しかし、退職後の生活を考える前に、まずは、本当に退職がベストな選択なのか、もう一度考えてみましょう。退職はご自身が望んでいることですか? 治療の副作用はどのくらい続く見込みでしょうか? 今後の生活の見通しはついていますか?
もし、「会社に申し訳ない」「迷惑をこれ以上かけられない」と思って、自分から身を引くおつもりなのであれば、立ち止まって、まずは会社の制度について確認してみましょう。
会社に休職制度はないでしょうか? 有給休暇はどうでしょうか? 会社によっては、病気の時に使える病気休暇や、有給休暇の積立制度の利用が可能な場合もあります。
会社の休暇等の制度は、就業規則や労働契約書に書かれています。よく分からない場合は、会社の人事労務担当者に確認してみることをおすすめします。

休めるのであれば、休んで、その間に次の生活を考えるのも一つの方法です。退職はそのあとから考えても遅くはありません。辞めるのは容易ですが、辞めてしまうと、元に戻ることは非常に困難です。後から悔やむことがないようにしっかりと確認したうえで考えてみましょう。