↓Q1. 地方で独り暮らしの母が乳がんになりました。母が暮らす地方の病院と子どもが暮らす都会の病院のどちらで治療を受けるのがよいですか。
↓Q2. がんの告知を受けて本人も家族も驚きましたが、告知は当たり前のことなのでしょうか。
↓Q3. 手術までの間、どのように母(患者)に接すればよいでしょうか。
↓Q4. 治療費はどのくらいかかりますか。乳がん患者に対する特別な支援制度はありますか。
↓Q5. 母が乳がんの手術をする日に仕事を休めないのですが、どうすればよいでしょうか。
↓Q6. 母の年金だけでは治療費が支払えず困っています。何か方法はありますか。
↓Q7. 母も私も医師の説明が十分に理解できないのではないかと心配です。病状の説明を受ける際、医師に確認することは何ですか。
↓Q8. あっという間に手術日が決まり、手術以外の方法はなかったのかと悩んでいます。この病院で、このまま手術を受けてもよいでしょうか。
↓Q9. 医師の説明を受ける際、母と同席することを求められていますが、遠くに住んでいるので行けません。担当医の説明を電話で聞くことはできますか。
↓Q10. 乳がんになった母の「治療に対して希望すること」をどのように確かめればよいでしょうか。
↓Q11. 患者本人も含め、家族の中で治療に対する意見が分かれています。どうすればよいでしょうか。
↓Q13. 担当医にがん以外の持病を伝える必要がありますか。
↓Q14. セカンド・オピニオンを受けたいのですが、担当医に言い出せません。どうすればよいですか。
↓Q15. 病状が進行し、受けられる治療法の選択肢がわずかしかありません。どうすればよいでしょうか。
↓Q16. 担当医に「治療法がない」と言われました。この先、どうすればよいですか。
↓Q17. がんの確定診断を受けた病院で、そのまま治療を受けてもよいですか。
↓Q18. 西洋医学は副作用が怖いので、補完代替療法を受けさせてもよいでしょうか。
↓Q19. 担当医が忙しくて聞きたいことがあっても気兼ねします。どうすればよいですか。
↓Q20. テレビで紹介されていた治療法を受けさせたいと考えていますが、どうすればよいでしょうか。
↓Q21. 転院が続くと、乳がんの母を支える私でさえ医師や病院から見捨てられたように感じます。患者本人はさらに孤独感を増しているようです。どのように医師や医療機関とつながればよいでしょうか。
↓Q23. 医療費(手術・放射線治療・薬物療法)の他に、ウィッグや下着、病院までの交通費などいろいろと費用がかさみます。負担を軽くする制度などはありますか?
↓Q24. 治療のため仕事を休職することにしました。休職期間中の医療費・生活費が心配なのですが、利用できる制度は何かありますか?
↓Q25. 病気のことを会社の人に知られたくありません。治療期間にかかるお金のことや、利用できる制度について相談したいのですが、会社以外で相談できるところはありますか?
Q1. 地方で独り暮らしの母が乳がんになりました。母が暮らす地方の病院と子どもが暮らす都会の病院のどちらで治療を受けるのがよいですか。
病院の選択は、患者さんの意思だけでなく、ご家族の生活環境やがんの進行状況、治療法によっても違ってきます。乳がんの診断を受けた病院の担当医にこれからの治療の見通しを確認しましょう。
どこの病院で乳がんの治療を受けるのかは、患者さん本人の意思はもちろんのこと、ご家族の生活環境や病気の進行状況により、どのような治療をどのくらいの期間受けるのかということによっても判断は違ってきます。
また、乳がんの治療は、手術、薬、放射線などを組み合わせて行い、何通りもの方法があります。その患者さんにとって、どのような組み合わせの治療が最善の方法なのか、担当医とじっくり話し合って決めることになります。
ご家族が主体となって決める場合は、乳がんの診断を受けた病院の担当医にこれからの治療の見通しを確認したうえで、患者さんの要望も確かめましょう。そして、患者さんの気持ちを尊重しながら、高齢の場合は療養中の介護の必要度も勘案し、患者さんとご家族の負担ができるだけかからない場所で治療を受けられるよう総合的に判断します。
また、家族だけでの判断に迷うときは、がん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターに相談し、アドバイスを受けるのも一つの方法です。相談支援センターでは、その病院にかかっていない患者さんやご家族の相談にも電話や面談で応じています。
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乳がん治療や診断について知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:診断・治療方法
相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報
Q2. がんの告知を受けて本人も家族も驚きましたが、告知は当たり前のことなのでしょうか。
患者さんが納得して治療を選択するためにはがんの告知が必要と考えられています。
突然「がんである」ことを告げられて、ご本人もご家族も驚かれたことでしょう。ただ、今は医師が本当の病名を伝えることはごく普通のことになっています。患者さんが自分で意思決定し、納得して治療を選択するために、たいていの場合ではがんの告知は必要と考えられています。また、患者さんと医療者、ご家族など周囲の人たちが一体となって治療を進めていくためにも、病状や今後の見込みの情報を共有しておくことが大切にされています。
医師は、がんの告知とともに、さまざまな情報を伝えているはずですが、患者さんやご家族は衝撃を受けて話が頭に入らないことも多いので、ご家族もわからないことがあれば遠慮なく再度尋ねるようにします。がんの告知を受けると、ほとんどの患者さんは死を意識されるようですが、この告知は「いつまで生きられるのか」という余命の告知とは別のものです。そのことをご家族も理解しましょう。
そしてご家族として大事なことは、ショックを受け、絶望感にさいなまれている患者さんの思いを受け止め、そのつらい気持ちを吐き出せるよう、患者さんの話にじっと耳を傾けることです。自分の状況を受け入れて、気持ちに折り合いが付けられるようになるまでには、個人差はあるものの誰でも時間が必要です。
もちろん、家族も同じようにショックを受けているので、自分の気持ちを抱え込まず、医療者や友人など誰かに話すことが必要です。がん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターでは、家族からの相談も受け付けていますので、このような機関を活用するのも一つの方法です。病院によっては、がん患者さんやそのご家族の精神的なサポートをしてくれる精神腫瘍医がいます。
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告知の際のコミュニケーションについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:家族とのコミュニケーション
患者さんの心の動きについて知りたいなら
「がん情報サービス」:がんと心
「がん情報サービス」:ストレスへの心の反応
相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報
精神腫瘍医の所在について知りたいのなら
日本サイコオンコロジー学会「登録精神腫瘍医制度」
こころやコミュニケーションのサポートについて(ノバルティスファーマ)
こころやコミュニケーションのサポート
Q3. 手術までの間、どのように母(患者)に接すればよいでしょうか。
手術を待つ間は不安が募ります。患者さんの言葉に耳を傾けて、温かく見守りましょう。
手術を待つ間は、患者さんもご家族も不安が募ることでしょう。この期間は、患者さんにとっては、できるだけ心身の調子をよくしておくこと、入院とその後の療養に備えて、仕事や家事の大事な部分を引き継いでおくことが大切になります。また、趣味のような、手術後にしばらくできなくなることをするなど、何かに取り組むことが不安な気持ちを安らげ、手術に向かう心の準備にもなります。手術を待つ間、このような日常が過ごせるように患者さんを支えてあげることがご家族の役割になります。そして、患者さんがしてもいいこと、しないほうがいいことの情報を共有し、患者さんに必要以上の安静を強いる必要はありません。
この時期、患者さんは周囲の人たちに「普通に接してほしい」と思いつつも、自分にかまってくれないと「心配していない」と寂しく感じるなど複雑な思いを抱えています。家族も患者さんの気持ちの変化が大きいことに戸惑いますが、患者さんの言葉に耳を傾けて、温かく見守りましょう。
また、患者さんが乳がん治療の予習をしたり、医師の説明を聞いたりするのにつき合うのもいいでしょう。ご家族が図書館などで乳がんに関する本や闘病記などを探して読むのもいいかもしれません。こうしたことがご家族自身の患者さんの手術に対する心の準備や、闘病に伴う生活の変化への備えにつながります。
患者さんの精神的な不安や落ち込みが気になり、どのように対応してよいのかわからない場合、また、ご家族自身もつらさに耐えられない場合は担当医や看護師、精神的なサポートをしてくれる精神腫瘍科の医師やがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターなどに相談するのも一つの方法です。
なお、手術の前後に抗がん剤や放射線療法の予定がある場合は、これらの治療後に副作用として口内炎が起こったり、免疫力が低下して虫歯や歯周病が進行したりすることがあるため、事前に歯科でのチェックや治療を患者さんに勧めてあげてください。
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患者さんの心の動きについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんと心
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精神腫瘍医の所在について知りたいのなら
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こころやコミュニケーションのサポートについて(ノバルティスファーマ)
こころやコミュニケーションのサポート
Q4. 治療費はどのくらいかかりますか。乳がん患者に対する特別な支援制度はありますか。
治療費は病期や治療内容によって異なります。経済的な問題はメディカル・ソーシャルワーカーに相談しましょう。
治療費は乳がんの病期(ステージ)や治療内容によって異なります。おおよその目安としては、手術(乳房温存術あるいは乳房切除術)を受けた場合、治療費は約60~70万円かかります。さらに、手術後に放射線療法や薬物療法が追加されると約30~100万円以上かかることもあります。
乳がんの患者さんに限った特別な支援制度はありません。しかし、乳がんの治療には公的医療保険が使えるため、患者さんが実際に支払う自己負担金はかかった医療費の1~3割になります。さらに、その自己負担金も「高額療養費」や「限度額適用認定証」の制度を利用すれば、自己負担限度額の範囲内で済みます。
治療費について心配なことがあれば、メディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。MSWは病院の医療相談室またはがん診療連携拠点病院の相談支援センターで活動しています。相談支援センターでは、その病院にかかっていない患者さんやご家族の相談にも電話や面談で応じています。
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医療費を軽減できる制度を知りたいのなら
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
知っておきたい医療保険制度 高額療養費(ノバルティスファーマ)
相談支援センターやMSWの所在について知りたいのなら
がん情報サービス「相談支援センターの情報」
公益社団法人日本医療社会福祉協会「会員マップ」
Q5. 母が乳がんの手術をする日に仕事を休めないのですが、どうすればよいでしょうか。
不測の事態に備えて、あらかじめ連絡方法などを確認しておきます。
手術日の家族の立ち会いに関しては、病院ごとの手続きがあるはずです。担当医や看護師によく確認しましょう。家族が必ずしも手術に立ち会わなくてもよいですが、通常は手術後すぐに執刀医から手術時の状況や病状に関する説明があるので、できれば患者さんの親族や親しい友人などに立ち会ってもらえると安心です。それが難しい場合は、執刀医の説明を受ける日時をあらかじめ決めておきましょう。
また、手術中や手術の前後にどのような事態が考えられるのか、何かあったときに最初に誰にどのように連絡してもらうのかなどを確認し、手術当日に不測の事態が起こっても対応できるように準備しておきます。
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手術やその後の経過について知りたいとき
聖路加国際病院ブレストセンター「乳がんの治療を受けられる方へ」(PDF)
Q6. 母の年金だけでは治療費が支払えず困っています。何か方法はありますか。
「高額療養費制度」など医療費の負担を軽減する支援制度があります。治療費で困ったことがあればご加入されている健康保険組合の担当窓口や病院のメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。がん診療連携拠点病院に設置されている「相談支援センター」でも無料で電話相談を受け付けています。
高額療養費制度は、医療機関や薬局に支払う1か月ごとの医療費の自己負担金がある一定の限度額を超えた場合に、その超えた分の払い戻しを受けられる制度です。
所得などによって金額が異なってきますので、メディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談してみると良いでしょう。
下記のリンクには制度についての説明が詳しく掲載されています。
併せて参考にしてください。
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医療費を軽減できる制度を知りたいのなら
知っておきたい医療保険制度 高額療養費(ノバルティスファーマ)
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
高額療養費制度について(ノバルティスファーマ)
高額療養費制度とは?
自己負担限度額の算定方法は?
さらに負担が軽減される制度
高額療養費の支給を受けるには
自己負担額の払い戻し試算
相談支援センターやMSWの所在について知りたいのなら
がん情報サービス「相談支援センターの情報」
公益社団法人日本医療社会福祉協会「会員マップ」
Q7. 母も私も医師の説明が十分に理解できないのではないかと心配です。病状の説明を受ける際、医師に確認することは何ですか。
病状や治療法について詳しく聞きます。あらかじめ質問を用意し、メモを取ったり、あらかじめ担当医に「家族と共有したいので録音をしても良いですか?」と許可を取った上で、録音を取ってもいいでしょう。説明がよく理解できなかった場合はもう一度説明してもらいましょう。
担当医の説明を受ける際、患者さんや家族が確認しておきたいポイントとしては、次のようなものがあります。
- がんのタイプ
- 検査の結果
- 診断は確定したのか、それとも疑いの段階か
- 発生した部位と拡がり、他の部位への転移について(進行期=ステージ)
- 受けられる治療にはどのようなものがあるか
- その中で担当医が勧める治療法とその理由
- 他の医療機関では別の治療法があるのか
- すぐに出てくる副作用と長期間経ってから出てくる副作用
- がんの治療が持病や持病の治療に影響するかどうか
- 今までどおりの生活ができるか
- ふだんの生活の中で気をつけること
- 参加できる臨床試験があるかどうか
- 治療に関わってくれるスタッフにはどんな職種の人がいるのか
- 疑問や質問が出てきたら、誰に連絡すればいいのか
などです。
医師と重要な話をするときには、患者さんもご家族も緊張しがちで、終わってみると内容をよく覚えていないことがあります。説明を受ける際には後でおさらいするためにも、メモを取ったり、担当医に許可を取った上で録音したりします。
説明が十分に理解できなかった場合には、もう一度、担当医に説明してもらいましょう。その際、どこがわからないのかを書き出し、事前にメモを渡しておくと面談がスムーズに進みます。
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受診の際に聞くべきことをチェックするなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん P27
Q8. あっという間に手術日が決まり、手術以外の方法はなかったのかと悩んでいます。この病院で、このまま手術を受けてもよいでしょうか。
疑問や不安は担当医に聞いて解消を。相談支援センターの看護師にも相談できます。
担当医から丁寧な説明を受け、十分に納得したうえで治療を決めたとしても、「他の方法のほうがよかったのではないか」と患者さんやご家族の気持ちは揺れるものです。治療に対する考えは日々変わるものですし、受け取る情報が増えることもあって、むしろ迷いが出てくるのは当たり前です。
ただ、疑問や不安を残したままで手術を受けると、手術の結果を受け入れられない場合もあり得ます。あとで後悔しないためにも、今、頭が痛くなるほど悩んでおくことが重要です。何でも遠慮せずに担当医に質問し、何度でも説明を受けましょう。がん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターの看護師に相談するのも、治療に対する不安事項を整理できる一つの方法です。
一方で、どんな治療法でも完璧ではなく、副作用などのデメリットがあることも理解しておきたいものです。
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乳がんについて知りたいなら
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「がん情報サービス」:診断・治療方法
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「がん情報サービス」:相談支援センターの情報
Q9. 医師の説明を受ける際、母と同席することを求められていますが、遠くに住んでいるので行けません。担当医の説明を電話で聞くことはできますか。
できるだけ同席を。同席できないときには、友人や知人に頼んだり、担当医に許可を得た上で録音するのも方法です。
治療の説明には時間がかかり、検査の数値や画像を見ながら行われることもあるため、すべての説明を電話で聞いて理解するのは難しいでしょう。また、患者さん一人では説明された内容を思い違いしたり、忘れたりすることもよくあります。できれば時間を作って、担当医と直接会って説明を受けることをお勧めします。
どうしても出向くことが難しく、電話で説明を受けたい場合は、後で誤解が生じないように、ご家族も診断の情報や治療内容を正確に理解することが大事です。電話の内容をメモしたり、メモや説明を聞くだけでは不安を感じるような場合は、担当医の許可を取った上で録音したりしておきましょう。
また、患者さんが説明を受けるときに、患者さんやご家族の友人・知人、病院にいるメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)が同席できる場合もあるので、調整してみましょう。同席してもらった人に担当医の話をメモや録音で残してもらうのも方法です。
乳がんそのものや治療に関する知識を事前に持っておくことも大切です。がん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターでは、看護師が一般的な診療情報を提供しています。このようなサービスを利用したり、担当医に診療情報提供書をもらったりしながら、理解を深めるようにしましょう。
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乳がんについて知りたいなら
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Q10. 乳がんになった母の「治療に対して希望すること」をどのように確かめればよいでしょうか。
患者さんが落ち着いているときに「治療を選ぶ際に何を大事にしたいと思っているのか」を聞き出してみましょう。第三者に聞いてもらうほうが患者さんが話しやすい場合もあります。
患者さんは、がんの告知を受けた直後では、それを受け止めるのに精一杯です。治療法の選択肢を提示されても、まだよく考えられないかもしれません。患者さんが治療に対する希望(どのような治療を受けたいのか)をイメージし、それをご家族に話すまでには時間がかかることが多いものです。
ご家族は、患者さんが落ち着いた様子のときに「治療を受ける際に何を大事にしたいと思っているのか」を聞き出してみましょう。例えば、大きな手術になっても、がんをできるだけ取り除くことを重視するのか、傷が残らないようにしたいのか、仕事に早く復帰したいのかなど、治療と身体、心、生活のことについて、具体的に答えやすい質問をしてみます。そして、患者さんが希望することに優先順位をつけるのを手伝います。紙に書き出してみるのもいいでしょう。このような作業を一緒に行うことで、患者さんの希望をきちんと確かめることができ、家族も治療法に関する情報を共有できます。これは治療を決めていくうえで大変重要なことです。
患者さんとご家族の関係やお互いの性格によっては、担当医や看護師、友人・親戚など第三者が入る、あるいは第三者に聞いてもらうほうが患者さんは話しやすい場合もあります。患者さんが希望を言いやすい「場面」や「タイミング」に配慮することも大切です。
また、患者さんの希望を聞くつもりが、ご家族自身の希望を押しつけたということがないように注意したいものです。
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乳がんについて知りたいなら
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「がん情報サービス」:診断・治療方法
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Q11. 患者本人も含め、家族の中で治療に対する意見が分かれています。どうすればよいでしょうか。
持っている情報や理解度に差があるのかもしれません。まずは家族で情報共有を。
まず、患者さんや家族の間でそれぞれがどんな意見を持っているのか、どこが異なっているのかを整理してみましょう。そして、その治療法を推す理由もはっきりさせたうえで、再度話し合ってみると、実は同じように考えていたことがわかるかもしれません。
がんの告知や治療が進む中で、患者さんと家族は一緒に落ち込み、ときには冷静さを失ってしまいます。そのときの状況によって、意見や思いは変わるということも覚えておきたいものです。
家族の意見が分かれる原因の一つに、医療者から受け取っている情報量や理解度の差があります。患者さんは診察や病状の説明のときには緊張や不安で大事な情報を聞き逃したり、聞き間違えたりすることもよくあります。録音したり、家族が同席してメモを取ったりして、正確な情報をベースに治療法を話し合います。家族間で情報を共有することも重要です。連絡帳を用意し、医療者から提供された情報を書き留め、家族全員が患者さんの状況を把握できるようにしましょう。
また、舵取りをする船頭が多いと、舟はなかなか前に進みません。家族の中で舵取り役となるキーパーソンを決め、担当医や看護師にもキーパーソンは誰かを伝えましょう。患者さんの思いを聞く人、医療の情報を集める人など、家族間で緩やかに役割分担をしておくのもいいでしょう。
意見が食い違う背景には、お互いに口に出さないものの、医療スタッフへの信頼感の違いや経済的な心配などが隠れている場合もあります。意見の違いの根本にあるものを少し考えてみてもいいかもしれません。
患者さんと家族、あるいは家族の間で意見が対立すると、患者さんは本音を言えなくなることがあります。そういう様子が見られたら、看護師や担当医などに入ってもらい、家族がいない場所で話を聞いてもらいます。
治療を受けるのは患者さん本人であり、がんへの向き合い方は人によって異なります。最終的には患者さんの意思を尊重することが大事です。担当医と一緒に、時間をかけてよく話し合いましょう。
患者さんにとって何よりも大切なのは、家族からの「あなたには私たちがついているよ」というメッセージ、そしていつでも話を聞いてもらえるという安心感です。
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Q12. セカンド・オピニオンとは何ですか。
納得して治療を選べるように、別の医師の意見を聞くことです。担当医の方針と別の医師の意見が異なる場合は、もう一度、担当医とよく話し合うことが大切です。
セカンド・オピニオンとは、治療を始める前に、診断や治療法、治療の計画について、担当医とは別の医師の意見を聞くことです。より多くの情報が得られ、患者さんが自分に最も合った治療法や医療機関を納得して選ぶことができます。
診断時の進行期にもよりますが、乳がんは比較的進行がゆっくりしているので、セカンド・オピニオンを受けた後で治療法を選択するという時間が持てる場合がほとんどです。
ただ、患者さんが自分の病状や進行度、担当医の治療方針を把握しないまま、セカンド・オピニオンを受けてもあまり参考にならないので、これらの点についてしっかり理解したうえで、セカンド・オピニオンを受けるようにしましょう。もし患者さんが別の医師の意見を聞くことに気が進まないなら、周囲の人はその気持ちを尊重すべきです。
セカンド・オピニオンを聞きに行く場合には、担当医に診察の記録や検査結果を出してもらう必要があります。
セカンド・オピニオンを受けられる医療機関は、各地のがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターや患者団体に聞くとよいでしょう。手術に関して聞きたいなら外科医に、抗がん剤治療(化学療法)の選択肢を知りたいなら腫瘍内科医にと、意見を聞く医師を選ぶことも大事です。なお、セカンド・オピニオンの費用は、健康保険が適応されず、全額自己負担になります。
担当医の方針とセカンド・オピニオンが異なった場合には、まずは担当医と話し合うことが大切です。セカンド・オピニオンの目的は転院をするためではなく、あくまでも納得したうえで治療法や医療機関を選択することです。
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Q13. 担当医にがん以外の持病を伝える必要がありますか。
受けられない検査や治療があったり、治療中や治療後に思わぬ症状が出たりすることがあるので、持病は必ず伝えましょう。
がんの治療法を決めるときには、がんの病状だけでなく、持病がある場合にはその影響も考えなくてはいけません。持病によっては、受けられない検査や治療法があり、薬を変更したり、薬の飲み合わせなどによって薬の副作用が強く出たり、効果が弱くなったりすることも考えられます。薬物療法の後に免疫力が下がり、持病が悪化したり、感染症にかかりやすくなったりすることもよくあります。
また、持病によっては手術にリスクを伴う場合があるため、今、受診している病院では治療が受けられず別の病院を紹介されることもあります。場合によっては、持病の治療を担当している医師と乳がん治療の担当医が事前に連絡を取り合い、情報を交換する必要があるため、担当医には持病について事前にきちんと伝えます。とくに患者さんが高齢の場合は、お薬手帳を参考にしたり、患者さんとのコミュニケーションをよく取ったりしながら、家族が持病やふだん飲んでいる薬について正確に把握しておきましょう。
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Q14. セカンド・オピニオンを受けたいのですが、担当医に言い出せません。どうすればよいですか。
よりセカンド・オピニオンを効果的に受けるためにも、担当医とじっくり話し合い、病状や病態を把握したうえで、依頼してみましょう。
担当医に気兼ねしてセカンド・オピニオンを言い出せない患者さんや家族は少なくないようですが、多くの医師はセカンド・オピニオンにそれほど抵抗を感じておらず、意外にすんなり了解してくれるケースが多いと考えられます。
担当医にどうしても言い出せない場合は、セカンド・オピニオンを受ける医師を決めて、その医師から担当医に診療情報(病理検査結果、画像診断フィルムなど)の提供を依頼してもらう方法もあります。がん診療拠点病院にある相談支援センター、入院中ならば担当の看護師や院内の医療相談室などに相談してみるのもいいでしょう。
また、セカンド・オピニオンを受ける際には、担当医によるファースト・オピニオンの内容(がんの種類、病状や治療方針)をしっかり把握していないと、セカンド・オピニオンを受けても他の医師の意見のどこが担当医と同じでどこが違うのかがわからず、治療選択の助けにならない場合もあります。まずは担当医とじっくり話し合ってからのほうがより意味のあるセカンド・オピニオンになるでしょう。
さらに、セカンド・オピニオンを受けたら、その内容を担当医に報告することも大事です。セカンド・オピニオンに対する担当医の意見を聞くことで、病気や治療法への理解がさらに深まり、患者さんや家族の治療に対する希望もはっきりしてきます。
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Q15. 病状が進行し、受けられる治療法の選択肢がわずかしかありません。どうすればよいでしょうか。
それでもまだできることは残されています。患者さんご本人の気持ちを大切にしながら、合わせて生活や心を支える緩和ケアなども検討してみましょう。
病状が進行し、受けられる治療法の選択肢がわずかしかなくなったとしても、患者さんや家族がまだできることは残されています。担当医とよく話し合い、患者さんご本人にとって最善の治療を選びましょう。もしも進行を抑えるための積極的な治療に限界が生じても、体や心の痛みを取り除き、日々の生活を支える緩和ケアなどを検討してみてはどうでしょうか。つらい症状をコントロールすることで体が楽になり、気持ちにも余裕が生まれて、よりよい日常を過ごすことにつながるかもしれません。
患者さんの状況に応じて、ほかの乳腺専門医の意見を聞くセカンド・オピニオンなども利用しながら、患者さんもご家族も納得のいく治療を選択することが大事です。
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緩和ケアや患者さんの生活を支えることについて知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんとつき合う
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:緩和ケア
Q16. 担当医に「治療法がない」と言われました。この先、どうすればよいですか。
がんと共存しながらよりよく生きるために、これからの治療方針について担当医としっかり話し合い、納得できないときはセカンド・オピニオンを受けたほうがよいでしょう。
担当医が「治療法がない」と言う場合、様々な状況があると思います。担当医の説明の仕方によって患者さんは見捨てられたような感じを強く受け、途方に暮れることがよくあります。しかし、「治療法がない=見捨てられる」ことではありません。がんと共存しながらよりよく生きることを考えましょう。
そのためには、つらい症状をコントロールし、体や心が楽になるための緩和ケアや支持療法(がんそのものに伴う症状や治療による副作用に対して予防や軽減させる治療)を主体にすることが大切になってきます。まずは、本人や家族の治療に対する希望を伝えたうえで、これからの治療方針について担当医としっかり話し合い、納得がいかないときは、セカンド・オピニオンを受けたほうがよいでしょう。
また、「治療法がない」と言われると、経済的な心配をされる患者さんやご家族も少なくありません。患者さんが契約している生命保険の内容によっては、生きている間に死亡保険金の一部か全額が受け取れる場合があります。詳細については契約している生命保険会社にお問い合わせください。さらに、介護が必要になったときは介護保険も利用しましょう。がんは特定疾患に指定されているので、40~64歳の人でも介護保険サービスを使うことができます。
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緩和ケアについて知りたいなら
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セカンド・オピニオンについてさらに詳しく知りたいのなら
「がん情報サービス」:セカンド・オピニオン、紹介状についてのQ&A
介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
東京都福祉保健局「介護保険パンフレット」
Q17. がんの確定診断を受けた病院で、そのまま治療を受けてもよいですか。
治療を担当する医師が「乳腺専門医」の資格を有しており、乳がん診療ガイドラインに基づいた治療を受けられるのかどうかを確かめましょう。
がんの治療に関しては、多くのがんで科学的根拠に基づいた、現時点での最善の治療法をまとめた「がん診療ガイドライン」が作成されています。乳がんの治療を受ける際も、乳がん診療ガイドラインに基づいた治療を受けることをおすすめします。今後、新薬などの臨床試験に参加する機会があるときにも、診療ガイドラインに準じた標準的な治療を受けていないと臨床試験の対象者とならないことがよくあります。その意味でも診療ガイドラインに基づいた治療を受けておいたほうがよいでしょう。
また、乳がんの治療を専門とする医師は「乳腺専門医」です。担当医がこの資格を持っているかどうかを確認しましょう。日本乳癌学会では乳腺専門医の名簿や乳腺専門医を育成する認定病院のリスト、乳がん診療ガイドラインをホームページで公開し、『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』(金原出版刊)を書籍として発行しています。治療に入る前に一度、目を通してみることをおすすめします。
さらに、国では全国どの地域でも質の高い治療を受けられるように「がん診療連携拠点病院」を指定しています。がん診療連携拠点病院の多くには乳腺専門医が在籍していますので、病院選びの1つの目安になります。
ただ、患者さんが確定診断を受けた病院での治療の継続を強く望んでいる場合には、転院を無理強いしないことです。また、どの病院であっても、治療方針に納得できない場合はセカンド・オピニオンを受けたり、患者さん自身が望む病院への紹介状を書いてもらったりする方法もあります。家庭の事情や通院の距離、担当医などスタッフとの相性も考慮しましょう。その半面、病院を替えると診察や検査がやり直しになり、治療開始が遅くなることも考えられます(進行の遅いタイプの乳がんの場合には治療が少々遅くなってもそれほど問題にはなりません)。どの病院で治療を受けるかはご本人、家族も含めてよく話し合ったうえで決めるようにしましょう。
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乳腺専門医の氏名と所在について知りたいのなら
日本乳癌学会:乳腺専門医
乳腺専門医を育成する認定病院の所在について知りたいのなら
日本乳癌学会:認定施設・関連施設
乳がん診療ガイドラインの内容について知りたいのなら
日本乳癌学会:乳癌診療ガイドライン
乳がんの診療を行っているがん診療連携拠点病院について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がん診療連携拠点病院の情報 乳がんの診療を行っている病院
セカンド・オピニオンについて知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん P26
乳がんについて知りたいなら
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「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん
Q18. 西洋医学は副作用が怖いので、補完代替療法を受けさせてもよいでしょうか。
補完代替療法は、がんの治療法として効果があると科学的に証明されたものはありません。信頼できる情報源から正しい情報を集めたうえで、担当医に必ず相談し、患者さんにとって本当に必要なものなのかどうかを慎重に考えましょう。
補完代替療法とは、手術や化学療法、放射線療法など、いわゆる西洋医学で行われる治療を補ったり、その代わりに行ったりする医療のことです。健康食品やサプリメント、鍼灸、マッサージ療法、運動療法、心理療法、心身療法など、さまざまな方法があります。
ただ、現段階では、がんの治療法として効果がある(生存率を上げる)と科学的に証明されたものはありません。がんそのものによる痛みや、西洋医学の治療による副作用を和らげるために使用することを推奨した研究やガイドラインもありません。
また、補完代替療法の中には、西洋医学と併用することによって治療の効果を弱めたり、体に思いもよらない害を与えたりするものもあります。補完代替療法を利用したいときは、信頼できる情報源(下記リンク参照)から正しい情報を集めたうえで、担当医に必ず相談し、患者さんにとって本当に必要なものなのかどうかを慎重に考えましょう。
なお、西洋医学にかぎらず、治療には副作用がつきものです。それは補完代替療法も例外ではありません。がん治療の主流である西洋医学の治療(化学療法、放射線療法)による副作用については、近年、さまざまな対策(支持療法)が講じられるようになり、以前よりも苦痛を軽減できるようになりました。治療による副作用が心配なときは、担当医、看護師に相談するようにしましょう。
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補完代替療法について詳しく知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんになったら手にとるガイド 補完代替療法を考える
「がん情報サービス」:代替療法(健康食品やサプリメント)
厚生労働省がん研究助成金「補完代替医療」(がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究班)
Q19. 担当医が忙しくて聞きたいことがあっても気兼ねします。どうすればよいですか。
依頼すれば時間を空けてくれるはずです。担当医に言い出しにくい場合は看護師に頼んで仲介してもらいましょう。また、質問メモを作ってから面会しましょう。
患者さんやご家族から依頼すれば、担当医はたいていの場合は時間を割いてくれるはずです。診察のときや病室に回診に来た際に話をするのが難しい場合は、空いている時間を教えてもらい、予約します。担当医に言い出しにくい場合は外来または病棟の看護師に頼んで、担当医に時間を取ってほしい旨を伝えてもらうとよいでしょう。
質問したいこと、確認したいことはあらかじめ箇条書きのメモにしておきます。面会時間に応じて、質問項目の数を加減しましょう。医師に一度にたくさん質問して答えてもらっても患者さんや家族には十分に理解できないことが多いため、優先順位の高い順に2~3つに絞っておくのがおすすめです。担当医に質問メモを事前に手渡すのも一つの方法です。担当医に会えなければ、看護師に渡してもらうよう頼みましょう。
また、まず看護師に話を聞いてもらうといいこともあります。話したいことや問題点が整理され、担当医にどのように質問すればうまく伝わるのかを一緒に考えてくれたり、担当医との面談時に同席して会話の調整役をしてくれたりすることもあります。
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Q20. テレビで紹介されていた治療法を受けさせたいと考えていますが、どうすればよいでしょうか。
情報の信憑性を含め、担当医や看護師、相談支援センターに相談してみましょう。
テレビや新聞などのメディアで紹介される治療法の中には、科学的に証明されていないものもあります。担当医に相談することなく、自己判断で始めたり、勝手に治療を変えたりしないようにしましょう。受けたいと思う新しい治療があるときは、担当医にしっかり相談し、意見を求めることをおすすめします。
その治療法についてテレビ局などに問い合わせる場合は、①どんな効果と副作用があるのか、②いつから何人くらいのどんな患者さんに使ったのか、③科学的なデータはあるか、④標準治療とどこが違うのか、⑤コストはどのくらいか、⑥使用期間はどのくらいか、といったことを確認します。そこで得た情報を担当医や看護師、がん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターの相談員に伝えて、情報の信憑性も含め、相談してみましょう。
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補完代替療法を考える P175
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Q21. 転院が続くと、乳がんの母を支える私でさえ医師や病院から見捨てられたように感じます。患者本人はさらに孤独感を増しているようです。どのように医師や医療機関とつながればよいでしょうか。
治療をしてくれる医師とは別に継続的に心身のサポートしてくれる医師を持つことが望ましいでしょう。その候補者には「緩和ケア医」や「精神腫瘍医」がいます。
乳がんの病状に応じた治療法を選択する中で、いくつかの医療機関を転院しながら治療を受けなければならないことも少なくありません。このような状況に置かれると、医師や医療機関から見捨てられたような気持ちになることがあります。よりよい療養生活を送るためには、治療をしてくれる医師とは別に継続的に心身のサポートしてくれる医師を持つことが望ましいといえます。その候補者としては「緩和ケア医」や「精神腫瘍医」がいます。
緩和ケア医といえば、ターミナル期に痛みのケアをしてくれる医師と思いがちですが、現在はその範囲にとどまらず、がん患者に起こるあらゆる苦痛に対して診断直後から看護師や薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど他職種と連携しながら継続的にサポートしてくれます。がん診療連携拠点病院の多くには「緩和ケア外来」が設置されているので、受診してみるのもよいでしょう。
精神腫瘍医とは、がん患者や家族の心のケアを中心に、よりよい療養生活が送れるように支えてくれる専門家です。その数は全国的にも少ないのが現状ですが、「精神腫瘍外来」を設置する病院も少しずつ増えてきました。いずれの専門家もがん治療に精通していることから、状況に応じた適切なアドバイスを受けることも期待できます。
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緩和ケアについて詳しく知りたいのなら
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精神腫瘍医の所在について知りたいのなら
日本サイコオンコロジー学会「活動紹介」:登録精神腫瘍医制度
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Q22. 手術や抗がん剤治療などの医療費を事前に確認したいのですが、どこに相談をすればよいでしょうか? また、月末に入院をして、月初に退院すると高額療養費制度が損をしてしまうと聞きました。どういうことでしょうか?
医療費の見込みについては、受診している病院の医事課や相談窓口で確認しましょう。
高額療養費は、医療機関や薬局で支払う1か月ごとの医療費の自己負担が一定の限度額(「自己負担限度額」)を超えた場合に、その超えた分を健康保険が負担してくれる制度です。自己負担限度額は、その方の所得区分と、かかった医療費の額によって決まります。
また、自己負担限度額は、個人単位・病院ごと、入院・外来ごと、暦月ごとで計算をします。月末(例えば10月28日)に入院し、翌月(例えば11月10日)に退院した場合、10月分と11月分それぞれに対し、自己負担限度額を超える部分が「高額療養費」となります。一方、月内に入退院があった場合(例えば10月10日から23日)は、10月入院した分すべてに対する自己負担限度額を超えた部分となりますので、高額療養費でカバーされる部分が多くなります。同じ14日間の入院であっても、月内の入退院の方が、月またがりになる入退院よりも最終的な自己負担額が少なくなります。外来での放射線治療や抗がん剤などの高価な薬物での治療でも同じことが言えます。
緊急を要さず、自分である程度入院日や放射線治療等をする日を選択できる場合は、上記の点を知っておくと、自己負担額が少なくて済みますよ。
Q23. 医療費(手術・放射線治療・薬物療法)の他に、ウィッグや下着、病院までの交通費などいろいろと費用がかさみます。負担を軽くする制度などはありますか?
病院や調剤薬局でかかる医療費には、健康保険の高額療養費制度を使って負担を軽減する仕組みがありますが、ウィッグや下着、病院までの交通費など通院にかかる費用については健康保険によるカバーの対象とはなりません。
抗がん剤治療などによって脱毛した際に購入するウィッグについては、自治体によっては費用の助成を行っているところも出てきています。お住まいの自治体(都道府県・市区町村)のホームページや窓口に確認してみましょう。
また、自己負担した医療費や、通院にかかった交通費などについては、「医療費控除」という税金の仕組みを使って、負担を軽減することができる場合があります。
「医療費控除」とは、所得税の軽減の仕組みです。つまり、1年間(1月1日~12月31日)に自分で負担した医療費が10万円以上の場合(注)に払っている所得税を、税務署に確定申告をすることで戻してもらう手続きのことです。
この医療費控除については、病院にかかった医療費だけでなく、ドラッグストアで購入した一般薬のほか、入院時の差額ベッド代、通院にかかった交通費なども対象となります。 通院にかかった交通費については、原則は公共交通機関利用分が対象となります。タクシー代については、病状などによりやむをえない場合に対象となります。自家用車を通院に利用した場合のガソリン代は対象外です。
(注)総所得金額が200万円未満の人の場合は、年内で支払った正味の医療費が「総所得金額等×5%」以上支払っているとき、となります。
Q24. 治療のため仕事を休職することにしました。休職期間中の医療費・生活費が心配なのですが、利用できる制度は何かありますか?
もし、あなたが仕事をされていて国民健康保険以外の健康保険に被保険者(本人)として加入されていれば、「傷病手当金」という制度が利用できるかもしれません。
傷病手当金は、病気によって療養が必要な場合で仕事を休み、給与が減額・無給になった場合等に加入している健康保険から支給される制度です。概ね給与の3分の2位が支給されます。病気ごとに、受給したときから最大1年6か月支給されます。
「傷病手当金」を受けるためには、いくつかの条件がありますので、加入されている健康保険に確認してみましょう。自分が加入している健康保険の名称は、保険証に書かれています。「保険者」という欄に書かれている団体が問い合わせ先となります。
医療費に関して使える制度については、こちらをご覧ください。
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傷病手当金について(協会けんぽ)
※協会けんぽ以外の、健康保険組合や、共済組合は、傷病手当金にさらにプラスして、「付加金」として給付しているところもあります。 なお、国民健康保険には、傷病手当金はありません。
お金と生活の支援「生活費等の助成や給付など」(がん情報サービス)
Q25. 病気のことを会社の人に知られたくありません。治療期間にかかるお金のことや、利用できる制度について相談したいのですが、会社以外で相談できるところはありますか?
治療期間にかかるお金のことや、負担を減らすために活用できる制度などについては、受診されている病院の相談室や、お近くのがん診療連携拠点病院にある「相談支援センター」に問い合わせしてみましょう。
がん診療連携拠点病院の「相談支援センター」は、治療のセカンドオピニオンや入退院に関することなどだけでなく、生活や仕事、経済的なことなども相談できます。また、相談先を紹介することもしています。
相談支援センターは、自分が受診していなくても利用することができます。相談の申込方法は、病院それぞれですので、まずは問い合わせてみてください。一人で悩まないで、相談してみましょう。
また、自分がどんな制度を利用できるか調べる手段として、NPO法人「がんと暮らしを考える会」の「がん制度ドック」というツールがあります。公的な制度だけでなく、民間の生命保険など、どんな制度が活用できるか、手続きや相談の窓口がどこなのかが、自分自身で、無料で確認できます。こうしたツールを利用するのも一つの方法です。