骨髄線維症について、よくあるご質問を掲載しています。
病気全般
↓Q5. 骨髄線維症の発症にかかわるJAK(ジャック)とは何ですか?
↓Q6. 骨髄線維症の症状にかかわる炎症性サイトカインとは何ですか?
↓Q11. 骨髄線維症が進行・悪化した際には、どのような症状が現れますか?
診断と治療
↓Q12. 骨髄線維症の検査では、どのようなことが行われますか?
↓Q13. 骨髄線維症の治療には、どのような方法がありますか?
生活・その他
↓Q15. 骨髄線維症の症状緩和に役立つ生活上の工夫について教えてください。
↓Q16. 骨髄線維症で食欲がないときの対処法について教えてください。
病気全般
Q1. 骨髄線維症とはどのような病気ですか?
骨髄線維症とは、骨の中にあるゼリー状の柔らかい骨髄が固くなり、骨髄本来の働きである正常な血液をつくることができなくなる病気です。
骨髄では、血液成分の源となる造血幹細胞から血液細胞(赤血球、白血球、血小板)をつくっています(造血)。出生後から10歳代までは全身の骨の骨髄で造血が行われていますが、20歳前後からは、体の中心部にある胸や腰の骨などの限定された骨髄でのみ、造血が行われるようになります。したがって、成人以降に発症することが多い骨髄線維症では、胸や腰などの骨の中にある骨髄で造血ができなくなり、体にとって重要な役割を果たしている血液細胞が正常につくられなくなります。
詳しく知りたい方は、 骨髄の構造と働きへ
Q2. 骨髄線維症の患者さんはどのくらいいますか?
わが国における骨髄線維症患者さんの数は、原発性のもの(原因不明の遺伝子異常で起こる病気)で推定380人と極めて少ないです。
骨髄線維症を発症する人は、米国では10万人あたり0.3人と報告されており、世界的にみても非常にまれな病気です。[1]
Q3. 骨髄線維症はどのような人に起こりやすいですか?
骨髄線維症の患者さんは男性にやや多く、60~70歳代の高齢の方々に多く発症する傾向にあります。
Q4. 骨髄線維症の原因はわかっているのですか?
骨髄線維症は、骨髄に含まれる造血幹細胞の遺伝子に異常が生じ、線維物質が増えることが原因で発症すると考えられています。
詳しく知りたい方は、 骨髄線維症が起こるしくみへ
また、骨髄線維症には2つのタイプがあり、造血幹細胞の遺伝子に異常が生じて発症するタイプ以外に、血液の病気やがんなどほかの病気が原因で発症するタイプがあります。
Q5. 骨髄線維症の発症にかかわるJAK(ジャック)とは何ですか?
JAKとは、造血をコントロールしているヤヌスキナーゼという酵素で、英語名のJanus kinaseを略してJAK(ジャック)と呼ばれています。
JAKには4種類の仲間があり、このうちJAK2は、血液細胞の発生にかかわると考えられています。骨髄線維症の患者さんの約半数では、JAK2の遺伝子に異常があることがわかっています。
また、骨髄線維症では、同じくJAKの仲間であるJAK1が活性化しています。JAK1の活性化は、全身の症状発現の原因の1つとされる炎症性サイトカインの産生にかかわる細胞内の信号伝達を促進します。このことから、JAK1の活性化による炎症性サイトカインの産生が、全身の症状発現に影響を与えていると考えられます。
Q6. 骨髄線維症の症状にかかわる炎症性サイトカインとは何ですか?
サイトカインとは細胞(cyto)でつくられる物質のことであり、それぞれ役割の異なる物質が複数あることがわかっています。そのうち、炎症を起こすものを炎症性サイトカインと呼びます。骨髄線維症の患者さんでJAK1の活性化により、数種類の炎症性サイトカインが異常に多くつくられていることがわかっており、それが倦怠感や発熱などの全身の症状発現に影響を与えていると考えられます。
Q7. 骨髄線維症は遺伝しますか?
一般的に遺伝性があるとは考えられていませんが、ごくまれに血縁関係の家族に骨髄線維症が起こる場合もあります。
Q8. 骨髄線維症は体にどのような影響を及ぼしますか?
骨髄線維症を発症して骨髄で造血ができなくなると、脾臓と肝臓を中心とする骨髄以外の臓器や組織で造血が行われるようになります。これを髄外造血(ずいがいぞうけつ)と呼んでいます。
髄外造血では、正常な血液がつくられなくなるため、貧血など血液の異常が生じます。また、骨髄の代わりに造血を行う脾臓や肝臓に負担が蓄積され、これらの臓器が徐々に腫れてきます。
詳しく知りたい方は、 骨髄線維症が起こるしくみへ
Q9. 骨髄線維症ではどのような症状がみられますか?
骨髄線維症を発症してから数年間は症状が現れにくく、徐々にさまざまな症状が現れるようになります。
よくみられる症状は、体がだるい、疲れやすいなど貧血に伴う症状です。そのほかにも、早期満腹感、おなかの張りや不快感、激しいかゆみ、骨の痛み、気力が出ない、集中力に欠ける、熟睡できない、大量の寝汗、発熱、体重減少などがみられます。
詳しく知りたい方は、 骨髄線維症でよく見られる症状へ
Q11. 骨髄線維症が進行・悪化した際には、どのような症状が現れますか?
全身の症状(発熱、寝汗、体重減少など)、重い貧血に伴う症状(むくみ、皮膚が青白くなる、胸の痛み、呼吸困難など)、脾臓の腫れの増悪に伴う症状(左上腹部の腫れ、左上腹部や背中の激しい痛みなど)、肝臓の腫れの増悪に伴う症状(左上腹部の腫れ、左上腹部や背中の激しい痛みなど)が現れる場合があります。
診断と治療
Q12. 骨髄線維症の検査では、どのようなことが行われますか?
まずは血液検査を行って、血球数などを測定します。そのほかに、血液標本検査、骨髄検査、腹部の画像検査、遺伝子検査など専門的な検査を行って、この病気に特徴的な異常があるかを確認します。
詳しく知りたい方は、 骨髄線維症の検査へ
Q13. 骨髄線維症の治療には、どのような方法がありますか?
骨髄線維症の治療法には、薬物療法、輸血療法、放射線療法、脾臓の摘出手術、骨髄移植があり、病気の進行度や患者さんの状態に応じて適切な方法が選択されます。
詳しく知りたい方は、 骨髄線維症の治療へ
Q14. 治療薬の服用は、いつまで続けるのですか?
骨髄線維症の治療目標である「病気の進行を抑えること」、「症状を緩和すること」を達成するには、医師や薬剤師の指示通りに薬を服用することが大切です。ご自身の判断で薬の服用を中止することなく、 症状チェックシートなどを用いて定期的に病気の状態を確認しながら、主治医とともに治療目標の達成を目指しましょう。
生活・その他
Q15. 骨髄線維症の症状緩和に役立つ生活上の工夫について教えてください。
骨髄線維症の症状に生活が妨げられるなどして、ストレスを感じることもあると思います。ストレスが溜まりすぎると症状が悪化することもありますので、日々の生活の中で軽い運動や散歩を行う、美味しいものを食べる、趣味をもつ、家族や親しい人と話すなど気分転換を上手にしたり、適度な休息をとったりして、ストレスを軽減することが大事です。
Q16. 骨髄線維症で食欲がないときの対処法について教えてください。
食事がとれなくなると栄養状態が悪くなり、病気にも影響しますので、毎日の食事は重要です。 すぐに満腹感を感じたり、おなかの張りや不快感があったりして食欲が低下しているときには、朝・昼・夕食の間に軽食をとる、ご飯をおかゆにする、野菜や果物をジュースにして飲む、生姜やレモン汁で食欲が増進する味付けにするなどして、体に必要な栄養素をしっかり摂取しましょう。
また、食事指導を受けている方は、主治医や看護師にご相談ください。
Q17. 骨髄線維症で熟睡できないときの対処法について教えてください。
十分な睡眠を得ることは、疲れなどの症状軽減・緩和につながるため、非常に重要です。熟睡できない理由はそれぞれありますので、主な原因別に対処法の例をご紹介します。
■不安やストレスで眠れない場合
寝る前に腹式呼吸(鼻からゆっくり息を吸い込み、おへその下に空気をためていくイメージでおなかを膨らませる→おなかをへこませながら口からゆっくり息を吐く)を数回行う
■夜中に目が覚めてしまう場合
午後~夜間にカフェインをとらない(カフェインには覚醒作用があります)、寝る前にお酒を飲まない(寝た後にアルコールの血中濃度が低下することで目が覚めます)
■寝汗が不快で眠れない場合
パジャマや布団カバー・シーツは汗の吸収が良い綿素材のものを使用する、汗拭き用タオルを常備しておく
■痛みなどの症状が激しくて眠れない場合
主治医や看護師に相談して、適切な治療・指導を受ける
Q18. 骨髄線維症になったら活動は制限されますか?
症状が落ち着いている状態であれば、体に負担がかからない範囲でやりたいことなどにチャレンジして、社会生活を維持することができます。趣味なども体の状態により継続できるものはあえて止める必要はありませんが、これまで通り続けてみて何か変化があった場合は主治医の判断に従ってください。骨髄線維症の患者さんのなかには、ボランティア活動に参加されたりしている方もいらっしゃいます。
Q19. 骨髄線維症の治療中に運動を行ってもよいですか?
本格的なスポーツというより、適度な運動という意味で体を動かすことはストレス発散にもなりますので、できる範囲で行うのはよいでしょう。ただし、心臓への負担や血栓が起こりやすい状態などは運動が勧められない場合があります。どのような運動をどれくらい行ってよいのか、主治医と相談してみてください。
骨髄線維症の患者さんのなかには、軽く汗をかく程度にゴルフやテニスなどのスポーツを短時間楽しんだりしている方もいらっしゃいます。
Q20. 骨髄線維症の治療中に旅行に行ってもよいですか?
骨髄線維症の患者さんの多くは、旅行に行くことができますが、個々の状態によって危険を伴うこともありますので、まずは主治医にご相談ください。
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厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班
診療の参照ガイド 骨髄線維症 令和元年度改訂版
http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2020/10.pdf(2020年10月1日閲覧)