骨髄線維症を発症してから数年間は症状が現れにくく、健康診断などをきっかけに偶然発見される患者さんも少なくありません。しかし、骨髄の線維化が進むにつれて、さまざまな症状が現れ始めます。
多くの患者さんは、血液中の赤血球の減少に伴い、体がだるい(倦怠感や疲労感)、動機、息切れなどの貧血症状が現れます。とくに、体がだるいという症状は、大半の患者さんが感じています。
また、骨髄の代わりに造血を行う脾臓や肝臓に負担が蓄積され、これらの臓器が徐々に腫れてくるのに伴い、おなかの張りや不快感、食事などをとってもすぐに満腹感を覚える早期満腹感、腹痛など腹部の症状が現れることもあります。その他、血小板の減少に伴い、皮膚に紫斑(あざ)ができたり、歯茎から出血しやすくなったりします。その他にもいろいろな症状がみられます。
さらに、病気が進行すると、体重減少、発熱、寝汗など全身の症状が現れるようになります。
骨髄線維症の主な症状
骨髄線維症によって起こる病気(合併症)
骨髄線維症では、血液成分のうち赤血球が最初に不足して貧血が起こりますが、さらに進行すると、白血球と血小板も不足した状態になります。白血球が不足することで、体内に侵入した病原体などから体を守る免疫力が低下するため、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。また、出血を止める役割をもつ血小板が不足することで、重篤な出血を招くおそれがあります。さらに、白血球に成長するはずだった若い細胞が、がん細胞に変化して白血病を発症することもあります。
その他、骨髄線維症が進行した患者さんでは、血管内に血栓(血の塊が細い血管につまったもの)が形成されたり、特定の静脈の血圧が異常に高くなったり、心臓の病気が発症したりすることが報告されています。
これらの合併症は、命の危険が伴う重大な病気であることから、病気の進行・悪化を示すサインがみられた場合は、直ちに主治医に連絡してください。
いつも感じる症状なのに程度が強まったり、頻繁に起こるようになったりすることに加えて、次のような症状にも注意が必要です。
骨髄線維症の進行・悪化を示すサイン
病気の状態を把握してこのような状態に陥らないためにも、ご自身の症状を定期的にチェックし、主治医に相談することをおすすめします。
メモ
全身の症状発現には、JAK1(ジャックワン)という酵素の関与がうかがえます。
骨髄線維症では、JAK2(ジャックツー)と同じ造血をコントロールしている酵素JAKの仲間であるJAK1が活性化しています。JAK1の活性化は、全身の症状発現の原因の1つとされる炎症性サイトカインの産生にかかわる細胞内の信号伝達を促進します。このことから、JAK1の活性化による炎症性サイトカインの産生が、全身の症状発現に影響を与えていると考えられます。