病気全般
Q1. 真性多血症とはどのような病気ですか?
真性多血症とは、赤血球の過剰な増加を特徴とする血液の病気です。病気の進行に伴い血液が濃くなるため、血液の流れが悪くなり、さまざまな症状がみられるようになります。心筋梗塞や脳卒中といった重大な合併症を引き起こすこともあります。
Q2. 真性多血症の患者さんはどのくらいいますか?
わが国における真性多血症の発症者数は1年間に人口10万人あたり2人と報告されています。[1]
Q3. 真性多血症はどのような人に起こりやすいですか?
真性多血症の患者さんは男性にやや多く、50~70歳代の方々に多く発症する傾向にあります。
Q4. 真性多血症の原因はわかっているのですか?
真性多血症は、骨髄に含まれる造血幹細胞の遺伝子に異常が生じ、赤血球などの血液細胞が過剰に増加することで発症すると考えられています。一方、なぜ、その異常が起こるのかについてはわかっていません。
Q5. 真性多血症の発症にかかわるJAK(ジャック)とは何ですか?
JAKとは、造血をコントロールしているヤヌスキナーゼという酵素で、英語名のJanus kinaseを略してJAK(ジャック)と呼ばれています。
JAKには4種類の仲間があり、このうちJAK2は、血液細胞の発生にかかわると考えられています。真性多血症患者さんの大部分で、JAK2の遺伝子に異常があることがわかっています。
Q6. 真性多血症は遺伝しますか?
一般的に遺伝性があるとは考えられていませんが、ごくまれに血縁関係の家族に真性多血症が起こる場合もあります。
Q7. 真性多血症ではどのような症状がみられますか?
真性多血症の初期は症状がない場合が多いですが、徐々にさまざまな症状がみられるようになります。
細い血管に血栓が形成されると、頭痛、めまい、赤ら顔(顔が赤くなる)、目の結膜や口の中の粘膜の充血がみられます。全身の症状としては、体がだるい、入浴後に全身がかゆくなるなどの症状がみられるようになります。
また、増加した赤血球は脾臓で処理されるため、脾臓が大きく腫れて痛むようになり、お腹の張り・不快感などが生じます。
Q8. 真性多血症ではどのような合併症が起こりますか?
真性多血症における過剰な赤血球の増加により、心筋梗塞や脳卒中といった命に危険を及ぼす重大な合併症を発症する場合があります。最近では、白血球の増加も血栓症を発症しやすくさせる要因であることが確認されています。
また、真性多血症に長期間かかっている患者さんの一部で、骨髄線維症や白血病などに移行することがあります。
Q9. 合併症のリスクを減らすにはどうしたらよいでしょうか?
心筋梗塞や脳卒中といった合併症を減らすには、真性多血症の治療を適切に行うことのほか、心血管危険因子を減らすことが大切です。心血管危険因子とは、高血圧症、肥満、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、喫煙のことです。とくに喫煙により、血栓症が発症するリスクはさらに高まるといわれていますので、禁煙を心がけましょう。
診断と治療
Q10. 真性多血症の検査では、どのようなことが行われますか?
真性多血症では赤血球の過剰な増加により血液が濃くなるため、まずは血液の濃さを評価するために血液検査を行い、血液細胞(赤血球、白血球、血小板)の数、血清エリスロポエチンの濃度などを調べます。そのほかに、遺伝子検査、骨髄検査を行う場合があり、この病気に特徴的な異常があるかを確認します。
Q11. 真性多血症の治療には、どのような方法がありますか?
真性多血症の治療法には、瀉血療法、抗血栓療法、薬物療法、対症療法があります。
真性多血症における治療の主な目的は、心筋梗塞や脳卒中といった予後に影響を及ぼす合併症の予防であり、主に赤血球などの血液細胞の量を継続してコントロールする治療を行います。真性多血症における血液細胞の量のコントロールの指標としては、全血液量に占める赤血球の量(ヘマトクリット値)を45%未満にコントロールすることとされており、患者さんの年齢や血栓症の既往などを総合的に検討したうえで治療法を選択します。また、真性多血症に伴うさまざまな症状を軽減する治療を併せて行います。
Q12. 治療薬の服用は、いつまで続けるのですか?
真性多血症の治療では、重大な合併症の発症を予防すること、およびさまざまな症状を緩和することが目標となります。これを達成するには、病気を正しく理解して、医師や薬剤師の指示通りに治療薬を服用することが大切です。また、治療薬を服用していてもヘマトクリット値のコントロールが難しい場合には瀉血を行うことがあります。
ご自身の判断で治療薬の服用を中止することなく、定期的に病気の状態を確認しながら、主治医とともに治療目標の達成を目指しましょう。
生活・その他
Q13. 真性多血症の症状緩和に役立つ生活上の工夫について教えてください。
真性多血症の症状に生活が妨げられるなどして、ストレスを感じることもあると思います。ストレスが溜まりすぎると症状が悪化することもありますので、日々の生活の中で軽い運動や散歩を行う、美味しいものを食べる、趣味をもつ、家族や親しい人と話すなど気分転換を上手にしたり、適度な休息をとったりして、ストレスを軽減することが大事です。
Q14. 真性多血症で食欲がないときの対処法について教えてください。
食事がとれなくなると栄養状態が悪くなり、病気にも影響しますので、毎日の食事は重要です。 すぐに満腹感を感じたり、おなかの張りや不快感があったりして食欲が低下しているときには、朝・昼・夕食の間に軽食をとる、ご飯をおかゆにする、野菜や果物をジュースにして飲む、生姜やレモン汁で食欲が増進する味付けにするなどして、体に必要な栄養素をしっかり摂取しましょう。
また、食事指導を受けている方は、主治医や看護師にご相談ください。
Q15. 真性多血症で熟睡できないときの対処法について教えてください。
十分な睡眠を得ることは、疲れなどの症状軽減・緩和につながるため、非常に重要です。熟睡できない理由はそれぞれありますので、主な原因別に対処法の例をご紹介します。
■不安やストレスで眠れない場合
寝る前に腹式呼吸(鼻からゆっくり息を吸い込み、おへその下に空気をためていくイメージでおなかを膨らませる→おなかをへこませながら口からゆっくり息を吐く)を数回行う
■夜中に目が覚めてしまう場合
午後~夜間にカフェインをとらない(カフェインには覚醒作用があります)、寝る前にお酒を飲まない(寝た後にアルコールの血中濃度が低下することで目が覚めます)
■寝汗が不快で眠れない場合
パジャマや布団カバー・シーツは汗の吸収が良い綿素材のものを使用する、汗拭き用タオルを常備しておく
■痛みなどの症状が激しくて眠れない場合
主治医や看護師に相談して、適切な治療・指導を受ける
Q16. 真性多血症になったら活動は制限されますか?
症状が落ち着いている状態であれば、体に負担がかからない範囲でやりたいことなどにチャレンジして、社会生活を維持することができます。趣味なども体の状態により継続できるものはあえて止める必要はありませんが、これまで通り続けてみて何か変化があった場合は主治医の判断に従ってください。
Q17. 真性多血症の治療中に運動を行ってもよいですか?
本格的なスポーツというより、適度な運動という意味で体を動かすことはストレス発散にもなりますので、できる範囲で行うのはよいでしょう。ただし、心臓への負担や血栓が起こりやすい状態などは運動が勧められない場合があります。どのような運動をどれくらい行ってよいのか、主治医と相談してみてください。
Q18. 真性多血症の治療中に旅行に行ってもよいですか?
真性多血症の患者さんの多くは、旅行に行くことができますが、個々の状態によって危険を伴うこともありますので、まずは主治医にご相談ください。
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小松則夫 日内会誌 2007; 96: 1382-1389