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家族性地中海熱の情報サイト

監修:
聖フランシスコ病院 副院長 リウマチ・膠原病内科
右田 清志 先生

家族性地中海熱は、特定の遺伝子の変異により炎症が起こる自己炎症性疾患*の1つです。無治療の場合は急激な発熱や腹痛・下痢などの症状が発作的に起こり、QOL(生活の質)の低下につながりやすいため、治療を継続して症状をコントロールすることがとても大切です。病気と上手に付き合いながら生活するために注意したいことや工夫できることについて、聖フランシスコ病院 副院長 リウマチ・膠原病(こうげんびょう)内科 右田 清志(みぎた きよし)先生にお話を伺いました。

*自己炎症性疾患:病原体から体を守る自然免疫システムの異常によって炎症が起こる病気。

家族性地中海熱の患者さんが直面する課題

患者さんの日常生活で主な課題となるのは、発熱と、関節や内臓などさまざまな部位から生じる痛みです。これらの症状は治療なしでは発作的・周期的に起こり、コントロールすることが難しく、社会生活にさまざまな支障をきたします。また数日後には症状が自然に治まるため、周囲の方が患者さんの病気を認識しにくいことがあり、職場や学校において理解を得づらいことも課題となるようです。
適切な治療が行われない場合、発熱発作を抑えることができず、“仕事に行けない”“登校できない”などの問題が起こりやすくなります。治療をしっかりと継続することで症状はコントロールしやすくなるため、まずは自分に合った治療を知り、医師と相談しながら治療を継続することが大事です。

また、医療機関側の課題も残されています。現在では治療の指針となる自己炎症性疾患診療ガイドラインにより、家族性地中海熱の診断基準や治療法も示されており、またインターネット上で患者さん向けの情報も発信されているため、病気への理解度は高まりつつあります。しかし、地域や診療科によってはまだ認知度が低く、全国どこの医療機関でも全ての患者さんに適切な対応ができているわけではないのが現状です。実際に、家族性地中海熱を確実に診断するための生物学的指標はなく臨床所見からの診断を基本にしていることから、家族性地中海熱を専門とする医師でなければ病気の特定は難しく、家族性地中海熱と診断されるまでには平均8.8年[1]かかっていることが分かっています。

イメージ画像:ベッドで症状を覚えている女性

病気と付き合ううえでは治療を継続することが何よりも大切

家族性地中海熱は症状が持続する病気ではないため、“たまに症状が起こるだけだから”“数日経てばよくなるから”と治療せずやり過ごしてしまう患者さんもいらっしゃるようです。しかし、まれではありますがアミロイドーシス*などの重大な合併症が起こることもあります。1人で悩んだり我慢したりせず医師を頼り、しっかりと治療を継続することが何より大切といえるでしょう。
治療によって症状をコントロールすることができるようになれば、日常生活の制限もほとんどありません。マラソンやサッカーなど、一部の激しい運動には注意が必要な場合もありますが、健康な方と同様に仕事や勉強、運動などができるようになる患者さんも少なからずいらっしゃいます。治療を継続し自分の症状の現れ方を知っていくことで、今まで我慢をしていたことや、やってみたかったことに挑戦できる可能性が広がるでしょう。

*アミロイドーシス:アミロイドと呼ばれる異常タンパク質がさまざまな臓器に沈着し、心不全や腎不全などの機能障害を起こす病気。

症状を悪化させないために——日常生活における注意点

発作のきっかけになる因子を理解する

患者さんそれぞれ発作の要因は異なりますが、共通因子としてストレスや疲労、感染症などがあります。また女性の場合、月経がきっかけとなり発熱や腹痛などの症状が出ることが多く、これには女性ホルモンの減少や月経による子宮内膜への刺激が関連していると推測されています[2]

つらい症状を繰り返さないための対策

イメージ画像:寛いでいる女性

家族性地中海熱の発作を引き起こさないために、日常生活でも先述の因子の中で避けられるものはなるべく避けるよう心がけるとよいでしょう。一般的な感染症対策として手洗いやうがい、マスクの着用、規則正しい生活などを日ごろから意識しましょう。またストレス対策として、まず“自分にとって何がストレスになっているか”を理解し、無理をせず自分自身の体を大切にしてください。
また、患者さんの中にはまれに “なんとなくお腹の調子が悪いから腹膜炎発作が起こりそう”というように予兆を感じる方がいらっしゃいます。そのような場合には早めに安静にすることも対策の1つといえます。長時間の労働や激しい運動も発作の原因の1つである疲労につながりやすいため、体調を鑑みながら調整することが重要です。

このほか、腸内細菌が家族性地中海熱の症状に関連している可能性が指摘されています[3]。そのため私は患者さんに、食事の際は消化がよいものを取り、食中毒の危険がある生ものなどは控えることを推奨しています。

自分自身の症状パターンを記録するのも1つの手段

予兆の有無や発熱のきっかけ、どの程度症状が現れたかなどを日々記録し自分の症状のパターンを把握することも効果的です。記録を見返すことで、発作の回数、どのような状況で発作が起こっているのか、発作のきっかけとなった出来事などに自分でも気付くことができます。また、医師と記録を共有すれば治療による発作のコントロールがうまくできているかどうかを判断してもらうことができるうえ、薬の量や頻度などに関する相談もしやすくなります。家族性地中海熱と上手に付き合いQOLの低下を防ぐうえで、ご自身の体調を振り返り記録しておくことは大いに意味があるといえるでしょう。

イメージ画像:体温計と筆記用具

職場や学校とのかかわり方

家族性地中海熱の発作をコントロールできていれば就労就学に関する制限はないため、職場や学校に行くことができますが、無理をしない工夫は必要です。疲れがたまる前に体を休める時間を確保することで発作を回避できることもあります。しかし一方で完全に発作をなくすことは難しいケースもありますので、発作の際はしっかりと安静にするように努めましょう。また発作でつらい症状がある場合は処方薬の変更や追加で症状の程度を軽くできることもあります。症状がつらい方は医師に相談してみることをおすすめします。
一般的なデスクワークならば仕事内容を制限する必要はありませんが、重度の肉体労働や激しいスポーツをする場合は筋肉に炎症が起こるリスクがあるため、あらかじめ医師に相談してください。
また、家族性地中海熱の特徴を周囲の方がよく知らないことで理解が得られづらいこともあります。周期的に発作が起こり、発作期間中はつらい症状があること、一方で発作期間以外は元気に見えること、ご自身の発作のきっかけになりやすい出来事(疲労や月経など)を知ってもらうことで周囲の方の理解が進むこともあります。家族性地中海熱について解説しているウェブサイトなども利用してみましょう。

自己炎症疾患友の会では、家族性地中海熱(FMF)の症状や治療など疾患情報の発信、また専用談話室を用意し、つらい思いをされているFMFの患者さんやご家族の方をサポートしています。

詳しくはこちら(自己炎症性疾患友の会)

イメージ画像:医師に相談する人

家族性地中海熱は長期間付き合っていく病気です。そのため定期的に受診しながら、体の状態を安定させるために何をすべきか、主治医と一緒に考えていくことが大切になります。
次の受診までの間に発作があった場合には以下の情報を主治医に伝えていただくと、現在の治療が患者さんの容体に適しているかどうかを確認しやすくなります。

  • 発熱の程度
  • 発熱の期間
  • 発熱に伴う痛みの有無や痛む部位
  • 症状が改善したかどうか
  • 薬の副作用の程度

家族性地中海熱による症状とそれ以外の病気から生じた症状を見極めるためには、腹痛の持続時間と下痢の程度は重要な情報となります。典型的な家族性地中海熱による腹痛発作は短期間(1日~3日ほど)であり、食事が取れず体重が減少するということは考えづらく、これらが長く続く場合にはアミロイドーシスや感染症などの可能性も考えられます[4][5]。体重減少がある場合は受診時に、いつと比べて何キロ体重が減ったのかなどを医師に詳しく伝えておきましょう。
発作に関する話のほかにも、食事が取れているか、仕事はできているかなども含めて日常生活で困っていることがないか、気分よく生活できているかなども伝えてください。

家族性地中海熱の患者さんがよりよい生活を送るために――右田先生からのメッセージ

病気と向き合っている患者さんへ

家族性地中海熱は非常に珍しい病気ではありますが治療指針が確立されているため、しっかりと治療して発作を抑えることにより、健康な方とほとんど同じように日常生活を送ることができるようになってきています。治療しても症状がうまくコントロールできていないと感じる場合には我慢せず、今回説明したポイントを踏まえて主治医に相談してください。一人ひとりの症状の現れ方に応じたよりよい治療方針を検討していきますので、患者さんご自身の生活がよりよいものになるよう、話し合いながら一緒に病気と向き合っていきましょう。

患者さんのご家族、周囲の方へ

家族性地中海熱の患者さんは、発作が起こると発熱や痛みなどの症状が現れて普段どおりの生活を送ることが難しくなります。そのため、発作が起こった時には周囲のみなさんの配慮が患者さんにとって何より支えになることでしょう。また、治療をしていても患者さんに症状が出ているように見える場合には、主治医に相談するよう身近な方がすすめることも大切です。
患者さんが家族性地中海熱と付き合いながらよりよい人生を送ることができるよう、周囲の方とも力を合わせていければと思います。

  1. 日本小児リウマチ学会編: 自己炎症性疾患診療ガイドライン 2017, 診断と治療社, 2017

  2. 岸田大, 他. JSIAD Journal. 2022;1(1):42-48.
    家族性地中海熱と月経

  3. 仲瀬 裕志. 日本消化器内視鏡学会雑誌. 2019;61 (11):2455-2465.
    家族性地中海熱遺伝子関連の消化管病変

  4. 難病情報センター.“全身性アミロイドーシス(指定難病28)”. 厚生労働省 難治性疾患政策研究班. 2021-09.https://www.nanbyou.or.jp/entry/207

  5. 日本臨床検査医学会 ガイドライン作成委員会編: 臨床検査のガイドライン JSLM2018 検査値アプローチ/症候/疾患, 株式会社 宇宙堂八木書店, 2018

家族性地中海熱を疑った時

自分の症状が家族性地中海熱かもと思ったら、まずは受診前に症状をチェックしてみましょう。チェック項目に多く該当する場合は、かかりつけ医もしくは専門施設へのご相談をおすすめします。

家族性地中海熱と診断されたら

家族性地中海熱と付き合いながらより良い人生を送るためには、信頼できる主治医とのコミュニケーションに基づく適切な治療によって、発作をコントロールすることが大切です。
一人ひとりの症状や環境に合わせたライフプランニングや、主治医に自分自身の症状を伝えるために工夫できることなど、治療を継続し発作をコントロールするポイントをご紹介します。

写真:岸田 大 先生

インタビュー

家族性地中海熱の女性患者さんが豊かな人生を送るために――月経、妊娠・出産などに応じた症状コントロールのポイント

信州大学医学部附属病院 リウマチ・膠原病内科 講師/外来医長
岸田 大 先生

写真:右田 清志 先生

インタビュー

家族性地中海熱との付き合い方――症状に振り回されない毎日を過ごすためにできる工夫

聖フランシスコ病院 副院長 リウマチ・膠原病内科
右田 清志 先生

写真:古賀 智裕 先生

動画

医師への症状の上手な伝え方

長崎大学病院 リウマチ・膠原病内科 講師
古賀 智裕 先生

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